高血圧の治療薬には、どのような種類があるのか気になったことはありませんでしょうか?
ご自身が使用している薬が高血圧治療薬の中ではどのような特徴があり、他にはどのような薬があるのか、気になる方も多いと思います。
この記事では、高血圧治療薬にどのような種類があるのか記載しています。
しかし、専門用語を用いると理解が困難な点もあるため、一般の方でも理解しやすいように簡略化している部分があります。
また、今回は主に各薬剤のカテゴリーごとにどのように作用するのかと言う点の違いを記載しております。
(複数の作用を持つ薬剤もありますが、そのような薬剤に関しては主な作用がどれに分類されるか記載しています。)
各カテゴリーの特徴などについては以下に記載している関連記事をご覧ください。
ご自身の服用されている高血圧治療薬が、どのカテゴリーに属するのかは「お薬検索[薬事典] – メディカルiタウン」で検索されるとすぐに分かるかと思います。
血圧とは
血圧はどのように決められているものでしたでしょうか?
これは「そもそも血圧とは何か?」でも書きましたが、
血圧=心拍出量×抹消血管抵抗
で定義されています。
このため、血圧を下げる薬剤は「心拍出量」に作用するか、「末梢血管抵抗」に作用するかのどちらかになります。
心拍出量を下げる薬
心拍出量とは心臓から血管に送り出す血液の量でした。
心拍出量を下げる薬剤は、以下の二つがあります。
- 心臓の収縮力を低下させたり、心拍数を低下させる薬剤
- 体内で循環している血液量を減らす薬剤
一つ目の心収縮力、心拍数を低下させる薬剤にはこの分類には、「β(ベータ)遮断薬」と「中枢性・末梢性交感神経抑制薬」と言う二つの薬剤がありますが、どちらかと言うとβ遮断薬の方がよく使用されています。
二つ目の循環血液量を減少させる薬剤は、「利尿薬」があります。
利尿薬の血圧を下げる効果が優れていることは、様々な文献で報告されています。
一般の方には聞きなれない言葉かもしれませんが、落ち着いて一つずつ特徴を見ていきましょう。
β遮断薬
別名、「βブロッカー」とも言われます。
体内にあるノルアドレナリンと言う物質が、心臓のβ1受容体と言われる部位に結合すると血圧が上昇します。
β遮断薬はノルアドレナリンが、心臓のβ1受容体に結合するのを阻害することで、血圧を下げます。
具体的には心臓のポンプ機能を低下させて、心拍数と心収縮力を低下させます。
中枢性・末梢性交感神経抑制薬
末梢性交感神経抑制薬はアポプロン(成分名 レセルピン)と言う薬剤がありますが、現在ほとんど使用されることはないので、ここでは割愛させて頂きます。
中枢性交感神経抑制薬には延髄にある中枢神経に作用し、交感神経を抑制することで、心拍出量を低下させる薬剤です。
使用頻度は少なめです。
眠気や口の渇きが出やすいので、他の薬剤の併用でも効果が不十分な時などに使用します。
利尿薬
利尿薬は大きく、以下のように分類されます。
- サイアザイド系利尿薬
- ループ利尿薬
- カリウム保持性利尿薬
- その他の利尿薬
この内、血圧を下げる目的で使用される事が多いのは、サイアザイド系利尿薬ですが、サイアザイド系利尿薬では血液中のカリウム値が低くなりやすいと言う副作用があります。
逆に、カリウム保持性利尿薬は、血圧中のカリウムを増加させやすいと言う特徴があり、サイアザイド系利尿薬と一緒に使用することにより、副作用を打ち消しあうと言うメリットがあります。
利尿薬は排尿を促進する薬剤なのですが、「なぜ、排尿すると血圧が下がるのか」疑問に思う方も多いと思います。
血液も尿も、体内の水分であることは同じです。
排尿や発汗などで体内の水分が少なくなると、血液中の水分も少なくなるため、体内で循環している血液量が低下することで血圧が下がると言うイメージです。
詳細な事を言うと、利尿薬は水分と一緒にナトリウムも一緒に尿として排出させます。
ナトリウムは血圧を上昇させる成分なので、これを排泄すると血圧も下がりやすいのです。
抹消血管抵抗を下げる薬
末梢血管抵抗を低下させる薬剤には、以下の7種類があります。
- Ca(カルシウム)拮抗薬
- ARB(エー・アール・ビー)・ACE(エース)阻害薬
- 直接的レニン阻害薬
- 選択的アルドステロン拮抗薬
- カリウム保持性利尿薬
- α(アルファ)遮断薬
- 血管拡張薬
カルシウム拮抗薬
カルシウム拮抗薬はとてもよく使用される薬剤です。
血管壁(血管の周囲を構成する組織)には、平滑筋細胞と呼ばれる細胞があり、この細胞にカルシウムイオンが入り込むことで、血管が収縮します。
カルシウム拮抗薬は、平滑筋細胞にカルシウムイオンが入り込むのを阻害することで、血管を弛緩させて血圧を低下させます。
ARB(エーアールビー)・ACE(エース)阻害薬
上記のカルシウム拮抗薬同様、非常によく処方されます。
体内でアンジオテンシンⅡと言う物質が生成され、これが受容体に結合することで血圧が上昇します。
アンジオテンシンⅡは受容体に結合しなければ、効果が発揮されませんので、血圧も上昇しません。
ARBはアンジオテンシンⅡが受容体に結合するのを阻害して、血圧を下げます。
ACE阻害薬はアンジオテンシンⅡが生成されるのを阻害する薬剤です。
直接的レニン阻害薬
直接的レニン阻害薬に該当する薬剤は、アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)しかありません。
ARB・ACE阻害薬は血圧を上昇させるアンジオテンシンⅡの合成を阻害したり、結合を阻害すると記載しましたが、直接的レニン阻害薬はアンジオテンシンⅡが合成される前の段階のアンジオテンシンⅠの合成を阻害することで血圧の上昇を抑えます。
(アンジオテンシンⅠはアンジオテンシノーゲンと言う物質にレニンが働くことで合成されますが、直接的レニン阻害薬はこのレニンの働きを抑えることでアンジオテンシンⅠの合成阻害をします。文章では分かりにくいと思いますので「高血圧治療薬を分類別に解説!ARB・ACE阻害薬とは?」に図を示しています。)
アリスキレンフマル酸塩は、1日1回の服用でも効果が持続する特徴を持ちます。
選択的アルドステロン拮抗薬
選択的アルドステロン拮抗薬も1種類しか薬剤はなく、エプレレノン(セララ)と言う薬剤のみです。
アルドステロンは、腎臓でナトリウムを尿として排泄させないように働きかけます。
その結果、体内のナトリウムが増加し、血圧は上がりやすくなります。
ナトリウムと血圧の関係については、以下の記事をご参照下さい。
エプレレノンは、血圧を上昇させるアルドステロンの機能を阻害することで血圧を下げます。
α遮断薬
血圧を下げる目的だけで処方されることは少ないですが、例えば高齢の男性の方は、前立腺肥大症を発症することが多いです。
α遮断薬は血圧を下げたり、前立腺を拡張させる作用もあるので、高血圧と前立腺肥大症を一緒に併せ持つ方などには、処方されることもあります。
通常、体内のノルアドレナリンと言う物質が血管のα1受容体に結合することで、血管を収縮して血圧が上昇します。
α遮断薬は、この結合を阻害することで、血管が拡張して血圧を下げます。
血管拡張薬
ヒドララジンと呼ばれるお薬で使用頻度は低いですが、妊娠中の高血圧で使用されることが多いです。
血管平滑筋に直接作用することで血圧を下げます。
最後に
高血圧治療薬の大きなカテゴリーは以上のようになります。
どの薬剤もそれぞれメリットとデメリットがありますが、医師が薬剤を選択する際にはかなり偏りが出てきます。
なぜそのような偏りが出るのかと言うと、高血圧治療薬には「選ばれるだけの価値のある薬剤は決まっている」と言うことになります。
「医師がこのような薬剤の中からどのような基準で薬剤を選択しているのか」については以下の記事をご参照下さい。
以上、「高血圧治療薬にはどのような種類があるか?」でした。
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