「高血圧治療薬にはどのような種類があるか?」でカルシウム拮抗薬は高血圧治療薬の中でもとてもよく使用される薬剤だと書きました。
これを読んで下さっている方も、カルシウム拮抗薬を服用されている方は多いのではないでしょうか?
今回は、カルシウム拮抗薬がどのような薬剤なのかについて投稿したいと思います。
カルシウム拮抗薬の作用の仕方
血管の壁である血管壁(血管の周囲を構成する組織)には、平滑筋細胞と呼ばれる細胞があります。
この平滑筋細胞にカルシウムイオンが入り込むことで、血管が収縮します。
カルシウム拮抗薬は、この平滑筋細胞にカルシウムイオンが入り込むのを阻害することで、血管を弛緩させます。
カルシウム拮抗薬の分類
カルシウム拮抗薬には、「ジヒドロピリジン系」と「非ジヒドロピリジン系」があります。
ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は、血管へ選択的に作用するため、血管を拡張する効果が非ジヒドロピリジン系と比べて高いです。
一方、非ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は、心臓へ選択的に作用し、心臓の収縮を抑える効果が高いため、主として不整脈や狭心症の治療薬として使用されます。
このため、高血圧を改善する目的として使用する場合は、主にジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬となります。
カルシウム拮抗薬の主な製品
血圧を下げる目的で使用されるカルシウム拮抗薬の主なものを下表に示します。
(※ 下表は2017年9月17日時点のものです。)
分類 | 世代 | 一般名(※1) | 商品名(先発医薬品) |
ジヒドロピリジン系 | 第一世代 | ニフェジピン | アダラート |
第二世代 | ベニジピン塩酸塩 | コニール | |
シルニジピン | アテレック | ||
第三世代 | アムロジピンベシル酸塩 | アムロジン | |
ノルバスク | |||
アゼルニジピン | カルブロック | ||
アムロジピンベシル酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物 | カデュエット(※2) | ||
非ジヒドロピリジン系 | ジルチアゼム塩酸塩 | ヘルベッサー |
(※1 一般名とは、お薬の効果を示す主成分の名称となります。)
(※2 カデュエットは上記のアムロジピンベシル酸塩と、アトルバスタチンカルシウム水和物と言うコレステロール値を下げる薬が一緒に配合されている薬剤です。)
第一世代の薬剤は、作用持続時間が短いですが、ニフェジピンには長時間作用が持続するように工夫された剤型もあります。
第二世代は、 第一世代に比べて作用持続時間が長く、広く使用されています。
第三世代は、作用持続時間がさらに長く、より使用しやすくなっています。
シルニジピンは、交感神経抑制効果があり、尿酸の生成も抑制する効果もあるため、第四世代と分類されることもあります。
カルシウム拮抗薬の特徴
長所
ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は、最も血圧を下げる効果が強いと言われています。
医薬品の価格である薬価も、高血圧治療薬の中では比較的安価です。
脳、心臓、腎臓などの血流量を改善するため、脳卒中、狭心症(特に冠攣縮性狭心症)、腎臓病がある方や高齢者にも効果的です。
また、心肥大(特に左室肥大)を改善する効果もあります。
左室肥大に関しては、以下の記事をご参照下さい。
他の高血圧治療薬の中には、血液中の血糖値や脂質や電解質に悪影響を与えるものもありますが、カルシウム拮抗薬は影響を与えません。
このように優れた特徴を持つため、高血圧治療においてとてもよく処方されるのです。
短所
ジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系の共通の副作用として、以下のものなどがあります。
- 動悸
- 頭痛
- 顔面紅潮(顔面が赤くなる)
- 下肢(足)の浮腫(むくみ)
- 歯肉肥厚(歯茎が腫れる)
これに加えてジヒドロピリジン系は、特に短時間作用型の薬剤で、反射性頻脈が起こりやすいです。
反射性頻脈とは、カルシウム拮抗薬の服用などにより急に血圧が下がった状態を、体が血圧低下を脈拍増加でカバーしようとするため、起こる現象を言います。
非ジヒドロピリジン系特有の副作用は、心機能抑制、徐脈などがあります。
カルシウム拮抗薬は、急な中止で症状が悪化する(リバウンド現象)場合もあるため、薬を中止や減量する際は徐々に減量します。
グレープフルーツジュースとの相互作用が有名になりましたが、薬の効果が強まり副作用が出やすくなるので摂取は避けるべきです。
この相互作用に関しては、高血圧治療薬は1日中効果が持続するものが多く、間隔を空けて摂取したとしも相互作用を回避することは難しいため、摂取は控えるようにしましょう。
ただし、アムロジピンに限ってはグレープフルーツジュースの影響はほとんど受けませんので、少量の摂取は問題ありません。
また、例えば水虫などに処方される抗真菌薬の中には、カルシウム拮抗薬の効果や副作用を増強させてしまうものもあります。
病院で受診された場合は必ず医師や薬剤師に併用薬の確認をしてもらうようにしましょう。
ここでは、注意事項の一部のみしか記載しておりませんので、各薬剤の詳細については「添付文書情報メニュー」で検索しご参照下さい。
以上、「高血圧治療薬を分類別に解説!カルシウム拮抗薬とは?」でした。