一般的に「ステロイド」と言うと、アトピー性皮膚炎の治療で用いる塗り薬や、免疫を抑えるために服用する薬をイメージされる方が多いのではないでしょうか?
これは決して間違ったものではないですが、ステロイドホルモンの中には、副腎皮質ホルモンと性ホルモンがあります。
世間一般の「ステロイド」とは、正確には「副腎皮質ホルモン」の事を指します。
(厳密に言うと、副腎皮質ホルモンはアルドステロン、糖質コルチコイド、アンドロゲンの三つに分けられ、主に糖質コルチコイドのことを指します。)
しかし、ここでは一般の方でも分かりやすいように「副腎皮質ホルモン」のことを「ステロイド」と表現します。
アトピー性皮膚炎などの治療で、処方されている薬がステロイドだと聞くと、すごく不安そうな顔をされることがよくあります。
しかし、ステロイドと一括りに言っても、副作用リスクが高いものからほとんどリスクはないものもあり、一概にステロイドと言うだけで怖がる必要はありません。
治療をするために必要な薬だからこそ処方されているのであり、どのようなリスクがあるのかを知った上で、万が一副作用と思われる症状が出た場合には適切に対応できるようにしておくことが重要なことです。
ステロイド
ステロイドは飲み薬である内服薬と、塗り薬などの外用薬がありますが、主に副作用が問題となるのは内服薬です。
塗り薬でも、ステロイドの強さのランクが高いものを広範囲に、長期間使用した場合には副作用が出やすくなることがありますが、一般的にそのような疾患ではステロイドの内服薬を服用している場合も多いです。
このため、今回は内服薬のステロイドについて解説します。
以下が主なステロイドの内服薬の一覧です。
(プレドネマ・ステロネマは外用薬ですが、内服薬と同様の副作用があるためリストに載せています。)
分類 | 一般名(※) | 商品名(先発医薬品) |
コルチゾン、ヒドロコルチゾン類 | ヒドロコルチゾン | コートリル |
フルドロコルチゾン酢酸エステル | フロリネフ | |
プレドニン、プレドニゾロン類 | プレドニゾロン | プレドニゾロン |
プレドニン | ||
プレドニゾロンリン酸エステルナトリウム | プレドネマ | |
メチルプレドニゾロン類 | メチルプレドニゾロン | メドロール |
トリアムシノロン類 | トリアムシノロン | レダコート |
デキサメタゾン類 | デキサメタゾン | デカドロン |
ベタメタゾン類 | ベタメタゾン | リンデロン |
ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム | ステロネマ | |
副腎皮質ホルモン合剤 | ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩 | セレスタミン |
(※ 一般名とは、薬剤の主成分の名称となります。)
ステロイドは高血圧症の原因となりますが、用量が多ければ多いほど、使用する期間が長いほど高血圧を引き起こしやすくなります。
逆を言うと、少しの量を短期間使用するのでは、副作用はほとんど出ることはないのです。
メチルプレドニゾロン(メドロール)はプレドニゾロン(プレドニン)の1.2倍、デキサメタゾン(デカドロン)とベタメタゾン(リンデロン)はプレドニゾロンの約10倍の炎症を抑える効果を持つと言われており、作用が強い分、副作用も出現しやすくなります。
ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(セレスタミン)は、花粉症やじんましんなどでもよく処方される薬剤ですが、上記のベタメタゾンを含有しており、長期使用されることは少ないですが、長期使用する場合には副作用に十分注意しなければいけません。
ステロイドを服用する場合は血圧の自己測定をしておき、血圧上昇が起きていないかセルフチェックするようにしましょう。
(血圧を正確に測定する方法については、「血圧を正しく測定するための11ヶ条」をご参照下さい。)
ステロイドの血圧上昇以外の主な副作用
ステロイドは血圧上昇以外にも多くの副作用があります。
主な副作用を列挙すると以下のようになります。
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)
- 骨粗鬆症
- 無菌性骨壊死(骨に血液が行き届かなくなり、壊死する疾患です。)
- 感染症にかかり易くなる
- 中枢神経障害(不眠、頭痛、めまい、うつ症状など)
- 白内障(視界が霧がかって見えたり、暗く見えたりします。)
- 緑内障(少しずつ視野が狭くなっていきます。)
- 多毛(毛深くなります。)
- 痤瘡(ざそう)(ニキビのこと)
- 満月様顔貌(まんげつようがんぼう)(食欲亢進により顔に脂肪が蓄積します。)
- 皮下出血
- 紫斑(皮膚や皮下組織中で起きる内出血)
- 食欲亢進
- 体重増加
- 血栓症(血液が何らかの原因で凝固しやすくなる)
- 不眠症
- むくみ
(糖尿病や脂質異常症や肥満は、それら自体が高血圧症になるリスクを上昇します。関連記事「高血圧患者の将来に悪影響を与える9つの危険因子」)
内服薬のステロイドに関しては、このようにとても多くの副作用の恐れがありますが、用法用量を守った服用であれば何も副作用が出ないことも多いです。
繰り返しになりますが、医師が副作用の恐れを考慮した上で治療をするために必要だと判断し、処方しているため、自己判断で薬の中止をすることは絶対にしないようにお願いします。
万が一、副作用だと思われる症状が出た場合には、「自己判断による薬の中止」をするのではなく、受診をするようにしましょう。
ステロイドの副作用は減量したり中止することで、症状が改善することも多いです。
ただし、ステロイドを長期で服用していた方や、高用量で服用していた方が急に服用を中止すると、リバウンド現象(副腎皮質ホルモンなくなったが反動で様々な有害事象が起こること)が起こりやすくなります。
この点からも、やはり自己判断では薬を中止したりはせず、万が一リバウンド現象と思われる副作用が出た場合は受診して医師の指示に従うようにして下さい。
以上、「ステロイド(副腎皮質ホルモン)には高血圧などの副作用がある」でした。
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