診察室で測定した血圧が正常で、家庭で測定した血圧が高い場合は、仮面高血圧と言います。
前回、「仮面高血圧は血圧が上昇する時間帯により分類される」と書きました。
もし、血圧を毎日測定していて正常だと思っていたとしても、毎回同じ時間帯のみに測定しているのであれば、それは高血圧が起きている時間帯を知らずにいるだけなのかもしれません。
今回はその詳細を解説したいと思います。
血圧の一日の変動性
まず、仮面高血圧の分類の話をする前に、血圧が一日を通してどのように変動しているのか説明させて頂きます。
通常、血圧は起床時から上昇し始め、活動をする日中に最も高くなります。
その後、夕方から夜にかけて徐々に下がり、睡眠中に最も下がります。
正常な方では、このように血圧には一日を通して変動性があり、これを「日内変動」と呼びます。
仮面高血圧における血圧上昇が起きている時間帯による分類
このように、一日を通して血圧には変動がありますが、仮面高血圧はこの変動パターンよりも高い血圧を示す時間帯があり、その時間帯により「早朝高血圧」と「昼間高血圧」と「夜間高血圧」に分類されます。
早朝高血圧
診察室血圧が140/90mmHg未満で、早朝に測定した家庭血圧が135/85mmHg以上の場合を「早朝高血圧」と言います。
既に述べたように、人は就寝中は血圧が低くなっていますが、起床時には血管が収縮することで血圧が上昇し、起床することができます。
低血圧の方はこの血圧の上昇が緩やかであるため、目覚めが悪くなります。
目が覚めると交感神経が優位になり、さらに血圧は上昇しますが、この時の血圧が過剰に上がってしまう方は早朝高血圧です。
早朝高血圧になりやすい原因としては以下のようなものがあります。
- アルコールの摂取量が多い
- 喫煙
- 起床時の室温が低い
- 薬の効果が起床時まで持続していない
(※参考 高血圧治療ガイドライン2014|日本高血圧学会)
早朝高血圧は、脳出血や脳梗塞などの合併症を突然引き起こす危険性が上昇するため危険です。
高血圧の合併症の怖さはほとんどの方は知っているようで知りません。
例えば、「アルコールは適度にして休肝日を設ける」「起床時に部屋が暖かくなるようにエアコンなどを設定しておく」「薬の効果が持続していない可能性があるのであれば医師に相談する」などの対策を講じましょう。
昼間高血圧
診察室血圧や家庭血圧が正常でも、昼間における職場や家庭でのストレス環境下での血圧が135/85mmHg以上の場合は、「昼間高血圧」と言われます。
健康診断や診察室で高血圧が発見されやすいため、他の高血圧に比較すると問題視されにくいですが、家庭での血圧測定を朝・晩の2回で行っている方はご自身で気づきにくいと言えます。
夜間高血圧
通常、睡眠中では血圧が下がりますが、この血圧が下がらなかったり、むしろ高くなる場合を「夜間高血圧」と言います。
具体的には、夜間血圧の平均が120/70mmHg以上を指しますが、これは自動血圧計(ABPM)を用いて測定します。
特に、夜間血圧が昼間の血圧に比較して高くなるタイプでは、リスクが高いと言われています。
夜間高血圧では、昼間の血圧測定では正常なため、高血圧の発見が遅れてしまう点が問題となっています。
原因には、以下のようなものがあります。
- 心不全・腎不全による体内の血液量の増加
- 自律神経障害
- 睡眠時無呼吸症候群
- 抑うつ状態
- 認知機能低下
- 脳血管障害
(※参考 高血圧治療ガイドライン2014|日本高血圧学会)
夜間には副交感神経が優位となり血圧を下げるのですが、自律神経障害はこれがうまく切り替わっていない事が原因で起こります。
就寝2時間前に、お風呂に浸かると交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズに行われやすくなると言われています。
血圧手帳を活用しましょう
過去に何度か紹介していますが、「血圧手帳」はご自身の血圧を記録することができ、自己管理することができるため大変おすすめです。
これは処方箋を受け付けしている薬局であれば、無料でもらうことができます。
血圧手帳は、血圧を測定した時間帯と数値を分かりやすく継続的に記録していくことができます。
これをかかりつけの医師や薬剤師に確認してもらうことで、家庭血圧がどのように変動しているのか明確に伝えることができます。
血圧が変動しやすい時間帯のある方や、季節により血圧が変動しやすい方は、是非活用してみて下さい。
以上、「血圧測定をしている方必見!血圧は測定する時間帯により変動する」でした。