アジルサルタン(アジルバ)とは
ARBのアジルサルタン(アジルバ)について解説します。
(ここでの解説は、2017年10月27日時点のアジルバの添付文書を一般の方でも分かりやすく簡略化・要約・補足したものであり、難解な点や少数の方にしか該当しないような点などは、著者の判断により省略させて頂いています。また、先発医薬品とジェネリック医薬品では、一部添付文書の記載に相違がある場合もあります。ジェネリック医薬品の正確な情報や、各製品の詳細な点につきましては、添付文書情報メニューで当該医薬品を検索してご確認下さい。)
アジルバは商品名で一般名(主成分の名称)はアジルサルタンです。
ARBについて知りたい方や、アジルサルタンには他の高血圧治療薬が一緒に配合された薬も発売されていますので、確認されたい方は下記記事をご参考にして下さい。
特徴
アジルサルタンは最も新しいARBですが(2017年11月7日現在)、最大の特徴はその効果の強さと持続時間にあります。
他のARBでは、「1日1回朝食後」などで薬を服用した場合、就寝中や起床時には薬の効果が弱まってくることがありますが、アジルサルタンは作用持続時間がとても長いため、夜間や起床時の血圧もしっかり下げることができます。
(夜間や起床時の血圧変動に関しては、「血圧測定をしている方必見!血圧は測定する時間帯により変動する」をご参照下さい。)
各種ARBが血圧を下げ切るまでに必要な日数と、その期間でどの程度血圧を低下させたかを比較した試験では、アジルサルタンは血圧を下げ切るまでに平均7.1日を要し、平均で15.3mmHgの血圧を低下させました。
これは、ARBの中でイルベサルタンに次いで2番目に早く、最も血圧を下げる効果が強いと言う結果となりました。
ちなみに、イルベサルタンは平均4.7日で血圧を下げ切りましたが、血圧は平均で8.2mmHgしか下げませんでした。
(※参考 Satoh M, et al.: J Hypertens. 2016;34(6)1218)
服用できない方
まず、ARBは妊婦の方は服用できませんので、こちらのアジルサルタンも妊婦の方には使用できません。
理由は、「妊婦や授乳婦の服用について」の項目で記載しています。
次に、ラジレス(※)を服用してしている糖尿病患者です。
(ただし、他の高血圧治療では血圧が著しく不安定、または正常範囲に入らない患者様は使用を検討します。)
(※ ラジレスについては「高血圧治療薬にはどのような種類があるか?」をご参照下さい。)
これは、アジルサルタンを服用中の糖尿病患者がラジレスを服用できないと言うことと同義です。
なぜかと言うと、非致死性脳卒中(致命的ではない脳卒中)、腎機能障害、高カリウム血症や低血圧のリスク増加が報告されているためです。
用法・用量
通常、成人は1日1回20mgを服用します。
ただし、年齢、体重、症状により医師の判断により適宜増減することがあります。
1日最大40mgまで増量することができます。
(当然ですが、自己判断で服用量を変更することはしないようにしましょう。 ここで記載している用法・用量は、医師の判断の下で増減できる量です。)
注意事項
- 腎動脈狭窄症の患者では、急速に腎機能を悪化させるおそれがあるので、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けることとなっています。
- 高カリウム血症(四肢のしびれや不整脈、吐き気などが出やすい)が出現しやすくなります。
- 重篤な腎機能障害のある患者では、腎機能障害を悪化させるおそれがあるため、投与量を減らすなど慎重に服用します。
- 肝障害のある患者では副作用が強く出る可能性があります。
- 脳血管障害のある患者では、血圧を低下させることで脳の血流量を低下させて、脳血管障害を悪化させてしまうことがあります。
- 薬剤過敏症(医薬品を使用してかゆみや下痢、吐き気などの副作用がでること)を起こしたことがある方は慎重に使用してください。
- 高齢者では、生理機能が低下しているため、慎重に投与します。
(高齢者の注意事項に関しては「高齢者が高血圧の薬を服用する際に注意すべき5つの事」を参考にして下さい。) - 手術前24時間は投与しないことが望ましいです。
- 低血圧になることで、めまい、ふらつきがあらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意しましょう。
- 以下の方には、低血圧がでやすくなるため注意して下さい。
- 厳重な減塩療法中
- 血圧を下げる効果がある利尿薬を服用中
- 血液透析中
併用には注意が必要なもの
血清カリウム値が上昇する恐れがあるもの
- カリウム保持性利尿剤
スピロノラクトン(アルダクトンA)、トリアムテレン(トリテレン)、カンレノ酸カリウム(ソルダクトン) - アルドステロン拮抗剤
エプレレノン(セララ) - カリウム補給剤
塩化カリウム(スローケー)、L-アスパラギン酸カリウム(アスパラカリウム、アスパラギン酸カリウム)、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(アスパラ)など
血圧低下作用が増強する恐れがあるもの
血圧低下作用のある利尿剤
トリクロルメチアジド(フルイトラン)、インダパミド(ナトリックス)、フロセミド(ラシックス)、アゾセミド(ダイアート)、トラセミド(ルプラック)など
腎機能障害、高カリウム血症、低血圧を起こす恐れがあるもの
- アリスキレンフマル酸塩(ラジレス )
- ACE阻害薬
エナラプリルマレイン酸塩(レニベース)、リシノプリル(ゼストリル)、テモカプリル塩酸塩(エースコール)、ペリンドプリルエルブミン(コバシル)など
リチウム中毒がでやすくなるもの
炭酸リチウム(リーマス)
(リチウム中毒では、食欲低下、吐き気、下痢、震え、発熱、発汗などの症状が初期に出やすくなります。このような症状が出た場合は受診をお勧めします。)
血圧を下げる作用が減弱する恐れがあるもの
非ステロイド性消炎鎮痛剤
ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、セレコキシブ(セレコックス)、インドメタシン(インテバン)など多数
(非ステロイド性消炎鎮痛剤は、市販薬でも該当するものが多数あります。不明な場合は、医師・薬剤師に確認の上で服用して下さい。)
腎機能が悪化する恐れがあるもの
非ステロイド性消炎鎮痛剤
ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、セレコキシブ(セレコックス)、インドメタシン(インテバン)など多数
起こりやすい副作用と頻度
循環器
0.1~5%未満
めまい
精神神経系
0.1~0.5%未満
頭痛
代謝異常
0.1~5%未満
血中カリウム上昇、血中尿酸上昇
(血中カリウム上昇については、注意事項の高カリウム血症を参考にして下さい。血中尿酸上昇とは、血液検査で尿酸値が上昇することを言います。)
消化器
0.1~5%未満
下痢
肝臓
0.1~5%未満
ALT(GPT)、AST(GOT)の上昇
(ALT、ASTは血液検査で判定され、異常な場合は肝機能障害が疑われます。)
腎臓
0.1~5%未満
BUN上昇、クレアチニン上昇
(BUNは血液検査で判定され、腎障害などで高値を示します。クレアチニンは血液検査で腎機能障害などを判定する指標です。)
その他
0.1~5%未満
血中CK(CPK)上昇
(CKは血液検査で判定され、異常値では心筋梗塞や筋炎、脳血管障害などが疑われます。)
重大な副作用
アジルサルタンの重大な副作用と頻度は以下の通りです。
- 血管浮腫(頻度不明)
(顔面、唇、咽頭、舌などの腫れが出やすくなります。) - ショック、失神、意識消失(頻度不明)
- 急性腎不全(頻度不明)
(急性腎不全では尿が減少したり、全く出なくなることがあります。) - 高カリウム血症(頻度不明)
(注意事項の項を参考にしてください。) - 肝機能障害(頻度不明)
(肝機能障害では黄疸、食欲不振、倦怠感などが出やすくなり、黄疸では皮膚や白目が黄色くなります。) - 横紋筋融解症(頻度不明)
(筋肉痛、脱力感、尿が赤褐色になるなどが出やすくなります。)
頻度が不明となっているものでも、頻度が高いものはございません。
体調に何も変化がないのであれば安心して服用継続するようにお願いします。
妊婦や授乳婦の服用について
「服用できない方」の項で記載しましたが、妊婦や妊娠している可能性のある方は服用できません。
理由は羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症などの重篤な有害事象があらわれたとの報告があるためです。
アジルサルタンを服用中に妊娠が判明した場合には、「直ちに服用を中止すること」となっていますが、処方薬の中止については主治医の指示が必要ですので、すぐに受診をして適切な指示を受けるようにして下さい。
次に、授乳中の方に対しては、服用を中止するか、服用を継続する場合は授乳を中止となっています。
(ただし、かかりつけの医師の指示に従うようにして下さい。)
以上、「アジルサルタン(アジルバ)の取説」でした。
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