先日、お薬をお渡しする際に、あるおじいさんにこう言われました。
確かに、糖尿病の薬と比べると安全そうなイメージがあるけど、薬は薬だし。
しかも、高齢者だから副作用も起こりやすそうな感じがするね。
高血圧の薬にも当然副作用はあり、中には重大なものもあります。
高齢者では、一般的には生理機能が低下しているため、慎重に薬を服用しなければいけません。
今回は、高齢者が高血圧の治療薬を服用する際に注意すべき点をまとめています。高血圧の薬を服用中の高齢者だけでなく、高齢者をご家族に持つ方などには是非読んで頂きたい記事です。
生理機能の低下に合わせて対策する
「高齢者が高血圧の薬を服薬する場合に注意すべき事」は、高齢者の身体ではどのような機能が低下しているのか考えていくと見えてきます。
お酒は肝臓で代謝されるって言うし、排泄の臓器って言うと腎臓くらいしか思い浮かばないな。
腎機能・肝機能の低下
高齢者では、肝機能や腎機能などが低下していることが少なくありません。
お薬の効果が切れるのは主に、肝臓で代謝(肝代謝)されるか、腎臓から尿として排泄(腎排泄)されるかのどちらかです。
(薬剤の種類により、肝代謝型か、腎消失型かのタイプが異なります。効果・効能が同じであっても、この消失経路のタイプが異なることがあります。自身の服用している薬剤がどちらなのか気になる場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談するようにしてみて下さい。)
例えば、肝機能が低下している方が、肝代謝型の薬を健常者と同量を摂取すると、薬の代謝が遅れるためより身体に残る時間が長くなり、健常者よりも副作用が出現しやすくなります。このため、肝機能が低下している方が肝代謝型の薬を服用する場合は服用量を減量しなければいけないことがあります。
(薬剤には様々な特性があるため、必ずしも減量しなければいけない訳ではありません。)
今日はペン太君冴えてますね~。
ただ、高齢者と一括りに言っても、肝機能や腎機能は個人差があります。高齢者では必ず肝機能・腎機能が低下していると言う訳でもありませんし、中には減量せずに使用するケースも多くあります。
肝機能に関しては、血液検査でALT(GPT)、AST(GOP)、γーGPTなどの項目で、腎機能に関しては、尿検査で尿たんぱくを見たり、血液検査でBUNやeGFRなどの項目をみることで推測ができます。分からない場合は、遠慮せずかかりつけの医師や薬剤師に確認してみましょう。
認知機能の低下
高齢者が薬を飲む際に他にも注意しなければいけない点があります。何でしょうか?
ヒントちょうだい。
飲み忘れが多くなるってこと?
高齢者では、もの忘れが多くなる傾向があります。さらに、高血圧症だけでなく様々な病気を併せ持っている場合が多く、服用すべき薬剤数が多くなっている事が多いです。このような場合、「飲み忘れ」が問題となるのです。
ご家族の方などが定期的に、飲み忘れがないか確認することができればそれに越した事はないと思いますが、お薬を管理してくれる方が常にそばにいらっしゃる方ばかりではありません。そのような場合には、高齢者でもご自身でお薬の管理をしなければいけません。
お薬の飲み忘れの対策や、飲み忘れてしまった場合の対応方法については、以下の記事をご参照下さい。
前回、患者様がご自身でお薬の管理ができない理由がある場合は、「一包化」と言う手段があると言うことを書きました。一包化とは何かと言うと、「服用時点毎に服用する薬を一包(1パック)にまとめる調剤方法」です。
例えば、朝食後に5種類の薬剤を服用しなければならない場合、その5種類の薬剤を1パックにまとめて入れて、朝食後はその1パックのみ服用すれば良いようにするのです。
しかし、一包化には「医師の指示」が必要であり、薬剤自体が一包化ができなかったり(吸湿性が高い等の理由)、保険請求上の理由で一包化の必要性がない方にはできない場合もあります。
(例えば、リウマチで手の指が動かしにくいなどの正当な理由がある場合は良いですが、PTPヒートから出すのが単純に面倒くさいなどの理由ではできない場合もあります。この判断は自治体によって異なります。ただし、薬局によっては保険を使って一包化できない場合であっても、実費を支払う事で一包化してもらうことができる場合もあります。)
また、お薬カレンダーを使うと、自身で服用したかどうか、今服用しなければいけない薬は何なのかが一目で分かるので、とても便利です。
どうしても、ご自身でお薬の管理ができない方には、薬剤師が患者様のご自宅に訪問し、医師への確認の下でお薬の飲み忘れの調整、調剤した薬と市販薬などとの相互作用、飲み忘れがないように管理する方法の提案などをする「在宅業務」を行っている薬局もあります。
生活保護者や患者負担がなしとなるような公費をお持ちでない方は、患者負担も発生しますが、医師の指示があれば介護保険や医療保険が適応になります。気になる方は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみましょう。
嚥下機能の低下
高齢者では、嚥下(えんげ)機能が低下していることも多いです。
(嚥下とは、口から胃まで送る運動のことを言います。)
ちょっと老人をバカにしすぎやぞ。
薬によっては、胃まで到達せず、食道で止まってしまうと、食道潰瘍を発生しやすくなる薬もあります。錠剤では飲みにくい場合は、医師や薬剤師に相談して、唾液で崩壊するタイプの錠剤や粉薬や、貼るタイプの貼付剤などもある場合があるので変更を検討してもらうようにしましょう。
その他、錠剤を服用しやすくする専用のゼリーと一緒に服用するのもオススメです。
骨折の恐れ
高血圧症の薬が効きすぎて低血圧になると、ふらつきがでやすくなり、転倒による骨折が起こりやすくなります。
特に、高齢者は骨密度も低下している事が多く、軽い打撲でも、骨折に繋がりやすいので要注意です。
薬を飲み始めてふらつきが出やすくなった場合にはかかりつけの医師に相談しましょう。
低血圧によるふらつきがなかったとしても、元々めまいや足のしびれ等がある場合には、転倒のリスクがあります。このような場合には、軽い低血圧でも転倒のリスクが高まるため、かかりつけの医師には伝えておくようにして下さい。
過度の減塩や脱水により低血圧の恐れ
減塩で血圧は下がりやすくなります。さらに、体内に水分が不足している状態である脱水があると高血圧症の薬の効果は増強され、低血圧が起こりやすくなります。
これは夏場や運動後などは要注意だね。
高齢者の場合は、過度な減塩は避け、減塩をする場合は徐々に行い、脱水が起きないようにこまめに水分補給をするようにしましょう。
具体的な減塩の方法については、以下の記事を参考にしてみて下さい。
ただし、心不全患者等では、水分摂取について医師から制限されている場合もありますので、そのような場合は医師の指示に従って下さい。
最後に付け加えておくと、脱水を予防しようと経口補水液を良く飲む方がいます。確かに、経口補水液は脱水の改善や予防に適していますが、食塩を多く含むものが多いので高血圧患者は過剰摂取に要注意です。高血圧症がある場合、経口補水液は薬剤師や登録販売者に確認の上で購入するようにしましょう。
以上、「高齢者が高血圧の薬を服用する際に注意すべき5つの事」でした。
だから、わしみたいな年寄りでも安心して飲めるからええわ。