前回記事「妊娠中・授乳中に使用される高血圧治療薬とは」で妊娠中では、妊娠20週未満で3種類の薬、妊娠20週以降で4種類の薬が使用できると書きました。
今回は、これらの各薬剤がどのような特徴があるのか書きたいと思います。
(ここで記載している各薬剤は、重要だと思われる部分のみ抜粋・要約しておりますので、詳細については、「添付文書情報メニュー」をご参照下さい。医薬品名は一般名(主成分の名称)で記載し、カッコ内は先発品(ジェネリック医薬品ではない薬)の商品名を記載しています。)
メチルドパ水和物(アルドメット)
メチルドパは、40年以上使用されている古くからある薬です。
母体や胎児にほとんど重篤な副作用が報告されていない比較的安全性が高い薬であると言えます。
用法
通常、成人では1日250~750mgから開始します。
(1錠が125mgと250mgのものがあります。例えば1日500mgであれば、1回に250mgの錠剤を1錠、これを1日に2回服用すれば1日500mgです。)
血圧が適正範囲に下がるまで、数日以上の間隔をおいて1日250mgずつ増量します。
通常、適切な血圧値に下がった後は、1日250~2,000mgで1~3回に分けて服用します。
(例えば1日750mgを3回に分けて服用するのであれば、1回250mgの錠剤を1日3回服用する事になります。)
なお、年齢や症状により適宜増減しますので、医師の判断で上記の用法外の処方をされることもあります。
使用できない方・慎重に使用する方
- 急性肝炎、慢性肝炎・肝硬変の活動期の患者様は使用できません。
(肝機能障害を悪化させることがあるため。) - その他の肝疾患にかかった事がある方や、肝機能障害のある患者様に対しては、医師の判断の下で慎重に使用します。
注意事項
服用開始時や薬剤の増量時に眠気、脱力感等があらわれることがありますので、高所での作業や、自動車の運転などの危険を伴う作業には注意しましょう。
服用中に尿を放置すると、尿が黒色に変化することがありますが、異常なことではありませんので、服用を継続して下さい。
ラベタロール塩酸塩(トランデート)
欧米諸国では比較的よく用いられていて、安全性は比較的高いです。
後述するヒドララジンと比較すると、主に母体に対しての副作用の面で優れています。
用法
通常、成人には1日150mgより服用を開始します。
(トランデートには50mgと100mgの錠剤があります。)
開始量で効果不十分な場合には1日450mgまで徐々に増量し、1日3回に分けて服用します。
こちらの薬剤も、年齢や症状により適宜増減しますので、医師の判断で上記の用法外の処方をされることもあります。
使用できない方・慎重に使用する方
- うっ血性心不全のある患者様は使用できません。
(心機能を抑制し、症状を悪化させるおそれがあるため) - 気管支喘息、気管支痙攣の恐れのある患者様は使用できません。
(気管支を収縮させ、症状を誘発又は悪化させることがあるため。)
(ここでの恐れとは、現在そのような診断が下されて確定的な方だけでなく、そのような疾患の可能性がある方も含みます) - 低血糖症、コントロール不十分な糖尿病、甲状腺中毒症、肝障害の方には、医師の判断の下で慎重に使用します。
注意事項
長期投与する場合は心機能検査を定期的に行います。
めまい、ふらつきがあらわれることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の作業には注意するようにしましょう。
ヒドララジン塩酸塩(アプレゾリン)
一般的に他の薬剤と比較して副作用が多く、妊娠中ではない通常の高血圧治療ではほとんど使用されることはありません。
しかし、比較的多くの産科医が現在でも使用しています。
妊娠高血圧症候群の治療薬としては、ラベタロールよりもあらゆる面で劣ることが報告されています。
用法
通常成人には開始量として、1日30~40mgを3~4回に分けて服用し、血圧値をみながら徐々に増量します。
(アプレゾリンには10mg、25mg、50mgの錠剤があります。)
血圧が適切な数値に下がった後は、血圧を維持するための用法は各個人により異なりますが、通常成人には1回20~50mg、1日30~200mgで服用します。
こちらも、年齢や症状により適宜増減しますので、医師の判断で上記の用法外の処方をされることもあります。
使用できない方・慎重に使用する方
- 虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)のある患者様は使用できません。
(症状が悪化するおそれがあるため) - 腎・肝機能障害のある患者様には、投与量、投与間隔の調節を考慮しながら慎重に使用します。
(血圧の低下作用や副作用が増大するおそれがあるため) - うっ血性心不全のある患者様は、医師の判断の下で慎重に使用します。
(症状が悪化するおそれがあるため) - 脳血管障害(脳卒中や脳梗塞など)のある患者様は、医師の判断の下で慎重に使用します。
(過度の血圧低下により脳の血流量が減少し、症状が悪化するおそれがあるため)
注意事項
血圧低下作用によるめまい等があらわれることあるため、自動車の運転や危険を伴う機械の操作には注意して下さい。
徐放性ニフェジピン(アダラート)
用法
ニフェジピンには、カプセル、L錠、CR錠がありますが、カプセルが作用時間が最も短く、CR錠が最も作用時間が長いです。
妊娠中に使用する場合には、短時間作用型のニフェジピンは急激で過度の血圧低下を起こす可能性があるため、基本的には長時間作用型(L錠やCR錠)を使用します。
L錠の用法
通常、成人には1回10~20mgを1日2回使用します。
(L錠には10・20mgの錠剤があります。)
症状により適宜増減しますので、医師の判断で上記の用法外の処方をされることもあります。
CR錠の用法
通常,成人には20~40mgを1日1回使用します。
(CR錠には10・20・40mgの錠剤があります。)
ただし、1日10~20mgより開始し、必要に応じて徐々に増量します。
なお、1日40mgで効果不十分な場合には、1回40mgを1日2回まで増量できます。
使用できない方・慎重に使用する方
妊婦(妊娠20週未満)又は妊娠している可能性のある婦人には使用できません。
(動物実験において,催奇形性及び胎児毒性が報告されているため。)
(妊娠20週以降の妊婦には使用できます。)
うっ血性心不全の患者様には、医師の判断の下で慎重に使用します。
(心不全が悪化するおそれがあるため)
注意事項
服用を急に中止したとき、症状が悪化することがあるため、中止の必要がある場合は徐々に減量します。
(医師の指示なしに自己判断で服薬を中止しないように注意して下さい。)
血圧低下作用によるふらつき・めまい等があらわれることあるため、自動車の運転や危険を伴う機械の操作には注意して下さい。
グレープフルーツジュースにより、副作用が増強することがあるため、摂取は控えるようにして下さい。
(薬剤を服用するタイミングと間隔を空けてグレープフルーツジュースを摂取したとしても、薬剤の効果は持続しているため、相互作用の影響を無くすことは困難です。)
以上、「妊娠中に使用できる4種類の高血圧治療薬」でした。
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