高血圧症の最も恐ろしい点である「心血管疾患」を引き起こしてしまう危険性がどの程度あるのかを、危険度の高さで分類することができます。
心血管疾患とは心臓・血管などの循環器における病気で、心筋梗塞や脳出血、脳梗塞などが該当します。
これは、「高血圧患者の将来に悪影響を与える9つの危険因子」で書いてあるような危険因子と、血圧値の分類を組み合わせて判定されます。
なお、当ページや上記の関連ページは、一般の方でも分かりやすいように簡略化している部分がありますので、詳細につきましては、当サイトの参考元である「高血圧治療ガイドライン2014」をご確認下さい。
リスク層による分類
心血管疾患を引き起こす危険度は、「リスク層による分類」を一つの指標として判定します。
「リスク層による分類」とは、個人に存在する危険因子により将来的にどの程度の心血管疾患を発症する危険性があるのか表したもので、「リスク層第一層」を心血管病疾患の危険度が最も低い層として、順にリスクが高い層を「リスク第二層」、「リスク第三層」と定めたものです。
具体的に、どのように各層が定義されているか以下に示します。
- リスク第一層
高血圧症の予後(※)に影響を与える危険因子(※)がない - リスク第二層
a. 糖尿病以外の1~2個の危険因子(※)がある。
b. またはメタボリックシンドロームの条件(※)を4項目中3項目満たす。
この内のいずれかに該当する。 - リスク第三層
a. 糖尿病
b. 慢性腎臓病
c. 臓器障害(糖尿病性腎症、蛋白尿、心不全など)
d. 心血管疾患(不整脈、狭心症、心筋梗塞など)
e. メタボリックシンドロームの条件(※)を4項目中全て満たす
f. 3個以上の危険因子
この内のいずれかに該当する。
仮に、「リスク第三層」であれば、「軽度の高血圧症」であったとしても、最も危険度が高い分類に属します。
もし、リスク第三層に該当し、高血圧であるにも関わらず高血圧症の治療をされていない方は、食事療法や運動療法で様子をみるのではなく、一刻も早く受診し、適切な治療を受けることを強くお勧めします。
血圧値による分類
成人における血圧値の分類は、以下のようになります。
(ここでの血圧値は家庭血圧ではなく、診察室血圧を用いて判定されます。)
- I 度高血圧 140~159 かつ/または 90~99
- II 度高血圧 160~179 かつ/または 100~109
- III 度高血圧 ≧180 かつ/または ≧ 110
※左側の数値が上の血圧(収縮期血圧)で、右側の数値が下の血圧(拡張期血圧)です。
「成人における血圧値の分類」については以下の記事で詳しく解説しています。
例えば、上の血圧が145mmHgで、下の血圧が103mmHgの場合は、上の血圧がⅠ度高血圧の範囲内でも、下の血圧がⅡ度高血圧に該当するので、Ⅱ度高血圧となります。
リスク分類
以上の「リスク層による分類」と「血圧値による分類」から、以下のような「リスクの分類」が導き出されます。
Ⅰ度高血圧 | Ⅱ度高血圧 | Ⅲ度高血圧 | |
リスク第一層 | 低リスク | 中等度リスク | 高リスク |
リスク第二層 | 中等度リスク | 高リスク | 高リスク |
リスク第三層 | 高リスク | 高リスク | 高リスク |
(※参考 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」)
「高血圧治療ガイドライン2014」では、これらのリスク分類から以下のような治療方針が推奨されています。
- 低リスク群・・・3か月以内の生活指導で140/90mmHg以上なら血圧を下げる治療を開始
- 中等度リスク群・・・1か月以内の生活指導で140/90mmHg以上なら血圧を下げる治療を開始
- 高リスク群・・・ただちに血圧を下げる治療を開始
高リスク群に該当する方で、高血圧治療をなされていない方は、心血管疾患を起こしてしまう危険性が非常に高くなっていますので、すぐに受診することををお勧めします。
上記のリスク分類の表では、高血圧症と判定される診察室血圧が140/90mmHg以上の方のみが対象となっている事が分かります。
では、正常高値血圧と言われる130~139/85~89mmHgである方は心血管疾患の危険性はないのでしょうか?
正常高値血圧では、至適血圧(120/80mmHg未満)より明らかにリスクが高くなっており、特にリスク第三層に属する場合は、上記のリスク分類の高リスク群に近い状態であると言われています。
従って、正常高値血圧に該当する方も、高血圧治療中の方は医師の指示に従い積極的に生活習慣を見直すことと、未治療の方で「リスク層による分類」の項で書いたリスク因子がある方は、高血圧治療が必要ではない可能性もありますが、一度受診して医師の意見を伺うことをお勧めします。
以上、「あなたはどこに当てはまる!?高血圧の危険度による分類」でした。
「危険因子にはどのようなものがあるか」「メタボリックシンドロームの条件」に関しては以下の記事をご参照下さい。