自分で錠剤を半錠にしちゃまずいのかな。
こういった医薬品の錠剤を半分にすることを「半錠にする」とか「半割(はんかつ)」と言いますが、このような処方は意外とよくあります。
半錠で調剤する場合は、薬局の薬剤師が調剤室で割っていることが多いのですが(中には半錠にする設備を導入している店舗もあります)、今回はこのような疑問をお持ちの方にアムロジンの半錠について解説したいと思います。
アムロジン錠は半錠にできるのか?
まず、そもそもアムロジン錠が半錠にできるのかを解説します。アムロジン錠には2.5mgと5mg、10mgの規格があります。
アムロジン錠2.5mgは半錠にできるか?
アムロジン錠2.5mgには半分に割るための溝が入っていません。
この溝は、「割線」と言われ、錠剤を手で半錠にする時には必要なものです。
割線がなければ、割るときに正確に半分に割ることができず、基本的には錠剤を粉砕をして調剤をするのですが、実はこの粉砕後の安定性試験(※)もメーカーは実施していないため、粉砕後に製剤がどのように変化するのか、どのように保存をすれば良いのかは不明なのです。
安定性試験とは、温度、湿度、光等の様々な環境下で医薬品品質の経時的変化を明らかにし、その結果に基づいて貯蔵条件や有効期間を設定するために実施する保存試験です。
(※引用元 安定性試験とは? | 医薬品安定性試験装置 専門サイト)
このため、アムロジン錠2.5mgは患者さん自身で半錠にするのは当然無理で、薬局の薬剤師が半錠や粉砕にして調剤することに関しても、経験的にどのような変化が起こるのか分かっている場合以外では、個人的にはお勧めではありません。
アムロジン錠5mgは半錠にできるか?
アムロジン錠5mgは、アムロジン錠の各規格の中では一番よく処方が出ている気がします。
僕が飲んでるやつだね。
それだけ処方頻度が高いだけあってか、アムロジン錠5mgには割線が入っており、半錠にも考慮した製剤となっています。
半錠にした場合の安定性試験もありました。
これによれば、アムロジン錠5mgは半錠にしても、普通の部屋の温度や湿度では60日くらいは外観の変化はないようですが、光には比較的弱く1000ルクスで20日間おくと着色してくると言うことになります。
このため、アムロジン錠5mgを半錠にして20日以上保管する場合は、遮光して保管すべきと言うことになります。
しかし、ここでもう一つだけ付け加えておくと、アムロジン錠5mgは「錠剤に薬剤が均一に分布しているか確認をした試験」を実施していません。(アムロジピン錠2.5もアムロジピン錠10mgも同様です。)
これはどういうことかと言うと、アムロジン錠5mgの1錠中ではどの錠剤も主成分が同じだけ入っていますが、錠剤の中で均一に分布してないと仮定すると、半錠にした場合に錠剤がきれいに半分になっていたとしても、中に含まれる主成分の量は異なってくると言うことになります。
つまり、僕が今飲んでいるアムロジン5mgの半錠も、きちんと半分量の2.5mgを飲めていないってこと?
ここからは個人的な見解になりますが、この「錠剤に薬剤が均一に分布しているか確認をした試験」を半錠にされる全ての医薬品がしているのかと言うと、それはありません。
だからと言って「アムロジン5mgを半錠にしても含量のことは心配しなくても良い」とも言い切れませんが、多くの方がそれで服用していて血圧が安定しているのも事実です。
従って、血圧を測定していて、毎日安定しているのであれば問題はないと思います。
僕はだいたい落ち着いてるから大丈夫そうだね。
アムロジン錠10mgは半錠にできるか?
アムロジン錠10mgにも割線が入っています。
しかし、残念ながら、分割後の安定性試験は実施されていないようでした。
このため、アムロジン錠10mgはアムロジン錠2.5mgと同様に患者さん自身で半錠にするのはお勧めできませんし、薬剤師が半錠に調剤する場合であっても経験的な知見がある場合に限定しておくべきだと思います。
アムロジン錠を半錠にした場合の衛生面は大丈夫か?
薬局で半錠にする場合は、薬剤師がPTPシートから取り出し手で半錠することが多いです。
しかも、人間の手で割る訳でしょ?
薬局で薬剤師が調剤する場合には、手を消毒し調剤をすることになっています。調剤室は衛生環境を保つために、調剤に必要なものなどは入れてはいけないことにもなっています。
医薬品の製造工場ほどの衛生環境には及ばないかもしれませんが、一定のクリンリネスは保たれているはずです。
アムロジン錠5mgは患者自身が半錠にしても良いか?
だったら、患者自身が半錠にするのは大丈夫そう?
半錠にするのには、一定の技術が必要です。
薬局の薬剤師は経験には個人差もありますが、半錠の調剤は慣れていますので、サクサクと半錠にしていくように見えますが、割線がある場合でもうまく半錠にできない場合もあります。
薬剤師が調剤中に半錠にするのを失敗しても、ミスした薬を廃棄して、新しく棚から取り出せば良いだけですが、一度患者さんに交付した薬の場合は話が違ってきます。
この場合は当然、患者さんが半錠にするのをミスったからと言って追加で薬は渡せません。
上記のことを分かった上で、患者さんが自己責任で半錠にすると言う場合には、調剤する薬剤師の判断で半錠にしないで渡すことも可能となります。
薬剤師が患者さんに本来は半錠にして交付する薬を半錠にせずに交付する場合は、薬剤師は患者さん自身が半錠にできる能力があるか否かを判断をし、もし、患者さんが正確に半錠にできずに健康被害などが生じた場合には、交付した薬剤師の責任も問われる可能性があると言うことも知っておかなければいけません。
アムロジン錠5mgを自分で半錠にするときのコツ
それでも自分で半錠にしたい場合には、半錠にするコツがあるので知っておきましょう。
これは割線がある錠剤に限定の話ですが、スプーンを裏にすると局面が上にきます。この状態で錠剤の割線をスプーンの局面の上に置きます。(画像では写真を撮るために片手で抑えてたため、少し錠剤の割線が平行からずれていますが、両手で抑えてしっかり平行となるようにして下さい。)
スプーンと割線が並行になっていることを確かめて、錠剤を両手の指でスプーンに押し付けて割ります。(画像の薬はアムロジン錠5mgではなく手元にあったアセトアミノフェン200mg「NP」を使用しています。)
キレイに半錠にできました。こうすると、割線に沿ってきれいに割れやすいのです。
でも、僕は力がそんなにないんだけど、大丈夫かな?
女性の薬剤師さんでもよく半錠にしてるしね。
話が変わるけど、そもそもアムロジン錠2.5mgがあるのに5mgを半錠で処方するのって何か理由があるのかな?
アムロジン錠2.5mgがあるのにわざわざ5mgを半錠で処方する理由
それは何?
病院で薬を処方する際には、採用薬の中から処方されます。採用薬は、病院と各製薬会社が取引をして決められます。当然、病院は同じ成分の薬同士であれば、利益率の高い製薬会社の製品を採用薬とします。
つまり、採用薬としてアムロジン錠5mgは登録されていたとしても、アムロジン錠2.5mgが登録されていなかった場合に、医師がアムロジン錠2.5mgが処方したい場合は、アムロジン錠5mgを半錠で処方する場合があるのです。
本当の理由は処方した医師しか分からないから、憶測でしか話ができないけどね。
でも、事実「採用薬」のキーワードでGoogleで検索すると多くの病院の採用薬リストが出てくるよ。
どうすればいいかな?
もし、病院の採用薬外の薬で処方してもらいたい場合は、素直に医師に相談してみましょう。その際に、自分がその薬を処方してもらいたい理由も必ず医師へ伝えるようにして下さい。
本当はコメント欄で処方を変更するような旨を記載されると、薬剤師としては医師に問い合わせしなきゃいけなくなるし、調剤を間違えるもとになるから好ましくはないんだけどね。
次回の診察日にお医者さんに相談してみようっと。
半分の規格がない薬の場合はどうすれば良いか?
アムロジン錠5mgに対しては、半分の規格である2.5mgがありましたが、中には半分の規格がない薬もあります。そのような処方の場合は、ジェネリック医薬品などの同じ主成分の薬で半分の規格の製品がある場合があります。
例えば、「プレドニン錠5mg」の規格は2.5mgはなく、多くの方が半分にして服用していると思います。しかし、同じ主成分の薬である「プレドニゾロン錠2.5mg「NP」」と言う製品なら2.5mgの規格があります。(プレドニン錠もプレドニゾロン錠NPもジェネリック医薬品ではありません。)
このケースでは、プレドニン錠もプレドニゾロン錠もジェネリック医薬品ではないため、薬局の薬剤師が独断で変更調剤することはできませんが、医師の許可があれば、プレドニン錠5mgの半錠からプレドニゾロン錠2.5mgの1錠へと変更することができます。
さらに、このプレドニン錠の場合は、半分の規格がなく割線がある錠剤のため、薬局で半錠にした場合には「自家製剤加算」を上積みで取られている可能性が高いです。
自家製剤加算とは、すごく簡単に説明すると「薬局で市場にはない薬をつくった時に取れる加算」です。
例えば、プレドニン錠5mgは2.5mgの規格がないため、薬局で半分に割っただけでも新しい薬を作り出したことになります。
割線があるものだけが限定なのは、おそらく半分に割ったときに正確に割れて、きちんと薬として使用できることが保証されていることが前提だからなのではないかと思います。(ここは私の推測なので間違っていたらすいません。)
この自家製剤加算は、結構高く点数が設けられており、ちなみにプレドニン錠5mgを1日1回0.5錠で30日分で調剤した場合で、患者負担が3割負担であった場合、患者負担にして300円上積みされることになります。
それなら、お医者さんに思い切ってお願いしてみた方がいいね。
まとめ:アムロジン錠5mgを半錠にできるのか
アムロジン錠5mgは割線があるため半錠にしやすくなっており、一般的な部屋での条件で60日程度であれば外観の変化が出ないことが証明されており、半錠には適している。
しかし、患者さん自身が半錠にする場合は、うまく半錠にできなかった場合などが想定されるため、お勧めはできない。
どうしても、自分で半錠にしたい場合はスプーンの裏の曲面を利用するとうまく割れやすい。
医師がアムロジン錠5mgを半錠で処方するのは、病院の採用薬が絡んでいる可能性がある。
以上、「アムロジン5mgを半錠で処方する理由|女性でも自分で半錠に出来る?」でした。
どうかしたの?