「高血圧患者が注意すべきもの~まとめ~」でお伝えした通り、勃起不全(ED)治療薬も高血圧症の治療薬を服用中の方には注意が必要な薬です。
ただ、EDの治療薬は通常血圧を上昇させることはありません。
では、なぜ高血圧症の治療薬を服用している方が慎重に服用しなければいけないのでしょうか?
ED治療薬は、その薬剤の特性から、医師や薬剤師が患者様に情報提供がしにくかったり、患者様も情報提供を受ける事を嫌がる方が少なからずいます。
慎重に使用しなければ重大な危険性もあるため、患者様はED治療薬に対してよく理解を深めた上で使用すべきです。
今回は、なぜED治療薬が高血圧治療中では慎重に使用しなければいけないのか解説します。
ED患者と高血圧患者の年齢
ED患者は国内に1130万人いると言われており、40代男性の約20%、50代男性の約40%が勃起不全であると推測されています。
男性であれば半数近くの方が50代でEDであり、50代以降は年齢とともに急激にEDの方が増加します。
そして、「40代の高血圧患者はどのくらいいるの?意外な事実が分かった話」でも書いたように、ちょうどこの年代は高血圧症の方が増える年齢でもあります。
実は、これには因果関係があるのです。
EDは、陰茎海綿体の動脈に血液が十分に流れ込むことができなくなることで起こります。
高血圧症では動脈硬化が起こりやすくなっており、これにより陰茎海綿体への血流が悪くなり、EDになりやすくなると言われています。
これは高血圧症だけでなく、動脈硬化を起こしやすくなる疾患である糖尿病や脂質異常症などでも、EDになるリスクを高めると言われています。
(脂質異常症に関しては、「高血圧患者の将来に悪影響を与える9つの危険因子」をご参照下さい。)
ED患者と高血圧症の患者の年齢層が同じであると言うことから、「ED治療薬と血圧を下げる薬は併用される事が多い」と言うことは容易に推測されます。
ED治療薬
高血圧症に注意が必要な理由
一般的には、ED治療薬は血圧を低下させます。
このため、血圧を下げる薬を服用している場合は、ED治療薬を併用すると過度な血圧低下によるふらつきやめまいなどの低血圧症状が起こることがあり、注意が必要なのです。
しかし、添付文書上では「治療による管理がなされていない高血圧の患者」にも使用できないとされています。
この理由は、まれに血圧を上昇させることもあり、ED治療薬が発売される前の臨床試験の段階では、重度の高血圧患者は除外して試験を行っているため、安全性が確立されていないためです。
では、「治療による管理がなされていない高血圧の患者」とはどのような患者なのかと言うと、「安静時収縮期血圧(上の血圧)>170mmHg又は安静時拡張期血圧(下の血圧)>100mmHg」とされています。
病院で高血圧治療を受けている方であれば、この程度まで血圧が高い方はほとんどいないと思われますが、高血圧症は自覚症状がないため治療を受けずに放置されやすい疾患です。
高血圧治療を受けていない方であれば、このくらいの血圧になっていても珍しいことではないと思います。
ED治療薬の一覧
ED治療薬は、インターネット販売で多く出回っており、医師や薬剤師の服薬指導を受けずに入手できてしまう現状があります。
しかし、インターネット販売で購入した場合は、約60%が偽造品であったと言う報告もあります。
本来、その危険性からED治療薬は処方箋医薬品と規制されており、基本的に患者様は医師の受診の下で処方箋がなければ薬局で購入することはできません。
使用者がその起こりうる有害事象の危険性や安全対策に関する情報を得ないまま使用することは、とても危険なため専門医に受診をした上で薬剤を交付してもらうようにして下さい。
以下にED治療薬の一覧を示します。
一般名(※) | 商品名(先発医薬品) |
シルデナフィルクエン酸塩 | バイアグラ |
バルデナフィル塩酸塩水和物 | レビトラ |
タダラフィル | シアリス |
(※ 一般名とは、薬剤の主成分の名称となります。)
ED治療薬の主な副作用
ED治療薬の血圧上昇以外の副作用は、ほてり、頭痛、動悸などがあります。
特に、狭心症治療薬である硝酸薬と併用はできないことになっていますので注意して下さい。
以上、「勃起不全(ED)治療薬は血圧を下げる薬を服用中では要注意」でした。
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