ペン太君、高血圧の薬飲んでるんじゃなかった?
ペン太君のように、私が薬局で勤務していても高血圧の治療を受けている方が「風邪引いたから葛根湯ある?」って言ってくること多いです。これはもちろん駄目なのですが、なぜ駄目なのかと言うと、葛根湯には「マオウ」や「カンゾウ」と呼ばれる成分が入っており血圧を上昇させることがあるため使用できないのです。
「カンゾウ」と言うのは生薬名で、カンゾウに「グリチルリチン」と言う有効成分が含まれています。つまり、血圧を上昇させるのは、カンゾウに含まれるグリチルリチンであると言うことになります。
しかし、製品により含まれている成分の表記が「グリチルリチン」であったり、「カンゾウ」であったりします。先ほども述べた通り、どちらも血圧を上昇させることには変わりはないですが、製品により表記が違うため消費者はどちらの成分でも血圧が上昇する恐れがあることを覚えていなければいけません。
統一してくれればいいのに。
今回は、血圧を上昇させる作用のある「グリチルリチン」と「カンゾウ」がそれぞれどのような製品に含まれており、血圧上昇以外の副作用はどのようなものがあるのか解説します。
グリチルリチンを配合した製品
グリチルリチンは、炎症を抑える作用や、免疫を調節する作用、肝細胞を増殖させる作用があります。点鼻薬や塗り薬、トローチ薬などでも配合されている商品はありますが、外用薬では血圧上昇を起こすことはほとんどありません。
ただ、市販の点鼻薬などには血管収縮薬など血圧を上げやすいその他の成分が入っている事もありますので、必ず購入の際には薬剤師や登録販売者に確認するようにしましょう。
医療用医薬品
医療用医薬品でグリチルリチンを含む主な製品は以下の通りです。
一般名(※) | 商品名(先発医薬品) |
グリチルリチン・グリシン・DL-メチオニン配合剤 | グリチロン配合錠 |
ニチファーゲン配合錠 | |
ネオファーゲンC配合錠 |
(※ 一般名とは、薬剤の主成分の名称となります。)
これらの医薬品は、慢性肝疾患における肝機能の改善、皮膚炎、円形脱毛症などの治療目的で使用されます。
一般用医薬品(市販薬)
市販薬でグリチルリチンを有効成分とする主な商品は以下の通りです。
薬効分類 | 商品名 |
鼻炎内服薬 | カイゲン鼻炎カプセルP |
コルゲンコーワ鼻炎ソフトミニカプセル | |
コルゲンコーワ鼻炎持続カプセル | |
プレコール持続性鼻炎カプセルL | |
ビタミン含有保健薬 | ドックマン肝寿 |
抗ヒスタミン薬主薬製剤 | レスタミンUコーワ錠 |
かぜ薬 | ルルアタックFXa |
パブロンメディカルN | |
健胃薬 | 液キャベコーワA |
健胃薬 | ソルマック5 |
グリチルリチンを含む市販薬はこれらの他にもたくさんあり、グリチルリチン以外の血圧上昇の恐れのある成分が配合されていることもあります。実際、ここで記載している商品にも、グリチルリチン以外の血圧上昇の恐れのある成分が含まれている商品があります。
鼻炎の内服薬や風邪薬にはグリチルリチンが含有されているものもありますが、「高血圧患者が注意すべきもの~まとめ~」でお伝えした「交感神経刺激薬」が含まれているものも多いです。
今まであんまり意識せず飲んでたから、まずかったのもあるのかも。
重要なので繰り返しますが、市販薬を購入する際は、血圧上昇を含めた様々な副作用の危険性があるため、薬剤師や登録販売者に確認の上で購入するようにしましょう。
カンゾウを配合した製品(漢方薬)
漢方薬は、グリチルリチンではなく、カンゾウで組成を表記することになっています。
「漢方薬は副作用がない」などと勘違いされている方がいますが、実は多くの漢方薬にはカンゾウが配合されており、血圧上昇を起こしやすいのです。
カンゾウが配合されている主な漢方薬は、以下の通りです。
葛根湯 | 乙字湯 | 安中散 |
柴胡桂枝湯 | 半夏瀉心湯 | 小青竜湯 |
防己黄耆湯 | 加味逍遙散 | 桂枝加竜骨牡蠣湯 |
麻黄湯 | 麦門冬湯 | 人参湯 |
白虎加人参湯 | 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 | 補中益気湯 |
六君子湯 | 桂枝湯 | 釣藤散 |
十全大補湯 | 荊芥連翹湯 | 疎経活血湯 |
抑肝散 | 五淋散 | 防風通聖散 |
芍薬甘草湯 | 四君子湯 | 抑肝散加陳皮半夏 |
清肺湯 | 清心連子飲 | 柴苓湯 |
清暑益気湯 | 加味帰脾湯 | 桔梗湯 |
注意して頂きたいのは、市販の漢方薬はパッケージに商品名を記載していることが多いですが、中に入っているものはカンゾウを含む漢方薬であることがあると言うことです。
その他には、咳や痰に対して使用される「ダスモック」と言う市販薬には「清肺湯」が、足がつる症状に対して使用される「コムレケア」と言う市販薬には「芍薬甘草湯」が入ってるね。
このように、商品名が漢方薬名となっていない商品はたくさんありますので、高血圧治療を受けている方が漢方薬を服用しようとする際には、必ずカンゾウなどの血圧を上昇させる副作用のある生薬が入っていないか確認すべきです。
グリチルリチン・カンゾウの血圧上昇以外の副作用
そんな生薬入れなきゃいいのにって思えてくる。
鼻炎薬や漢方薬などに含まれているグリチルリチンやカンゾウは、偽アルドステロン症などの副作用を起こす事があります。
「アルドステロン」と言う血圧上昇を起こすホルモンが体内で過剰に分泌されている疾患を「アルドステロン症」と言いますが、この「偽アルドステロン症」はアルドステロンが過剰分泌されていないにも関わらず、アルドステロン症のような血圧上昇、低カリウム血症、むくみ、こむら返り、筋肉痛などの症状が出現しやすくなります。
(低カリウム血症では、脱力感や吐き気、便秘、尿の排泄量が多くなるなどの症状が出やすくなります。)
これらの症状が出た場合は、服用を中止し、すぐに受診するようにしましょう。
以上、「カンゾウを含む漢方薬は血圧上昇の恐れあり」でした。
多分、昨日風邪引いた人と話してたから風邪うつされちゃったんだろうな。
今日は葛根湯でも飲んで早めに寝よっと。