この記事では、「糖尿病と疑われる患者数」と「糖尿病を否定できない患者数」が、国内でどのくらいいるのか、またどのような世代に多く分布しているのか解説しています。
糖尿病患者の平均寿命が近年どのように変化しているかについても解説しています。
糖尿病患者と糖尿病予備群を合わせると国内の糖尿病患者数は2000万人
患者数ってどのくらいなんだろ?
「平成28年「国民健康・栄養調査」の結果(厚生労働省)」によれば、「糖尿病が強く疑われる者(糖尿病患者)」は約1,000万人と推計され、「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1,000万人と推計されています。
糖尿病予備軍は、平成9年以降増加していましたが、平成19年以降の調査では減少しています。しかし、糖尿病の患者数は、平成9年以降継続して増加しています。
これらを合わせた数字では、平成19年以降概ね減少傾向であると言えます。
「糖尿病が強く疑われる者」、「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合の年次推移
(平成28年「国民健康・栄養調査」の結果より)
不思議な気がしますが、糖尿病の可能性がある方が減少しているにも関わらず、糖尿病の患者数は増えていることが分かります。この要因としては、以下のようなことが考えられます。
- 近年の国民の健康志向の高まりや特定健診・特定保健指導の効果が現れたことにより健常者から糖尿病予備軍へのシフトが減少
- 社会の高齢化により糖尿病予備軍から糖尿病患者へのシフトが増加
ただ、単純に糖尿病の疑いのある方(糖尿病が強く疑われる者と糖尿病の可能性を否定できない者の合計)の割合が減っていることで安心できる訳ではなく、ここで問題とすべきはその患者数の多さにあります。
自分と同じ世代の30代や40代の世代ではどのくらいいるんだろ?
40代以降の約4人に1人は糖尿病の疑い
次に、「平成28年「国民健康・栄養調査」の結果(厚生労働省)」の表1と、「統計局ホームページ-日本の統計 2018-第2章 人口・世帯」の年齢別の人口から、世代別に糖尿病患者・糖尿病を否定できない方の人数を独自に推測したものが以下の表です。
糖尿病患者・糖尿病を否定できない者の割合(男性) | 糖尿病患者・糖尿病を否定できない者の割合(女性) | 年齢別人口(男性)(※) | 年齢別人口(女性)(※) | 糖尿病患者・糖尿病を否定できない者の人数(男女計) | |
20代 | 0.7 | 1.2 | 6429 | 6113 | 118359 |
30代 | 2.8 | 1.4 | 7803 | 7688 | 326116 |
40代 | 8.5 | 6.9 | 9608 | 9389 | 1464521 |
50代 | 23.7 | 15.8 | 7727 | 7721 | 3051217 |
60代 | 34.3 | 27.2 | 8991 | 9445 | 5652953 |
70代以上 | 42.0 | 37.0 | 10027 | 14289 | 9498270 |
(※ 年齢別人口の単位は1000人)
これらから分かることは、糖尿病患者・糖尿病を否定できない方は40代以降で約24.5%、50代以降では約31.3%、60代以降では約35.4%、70代以降では39.1%もいると言うことです。
一般的には、まだまだ若いと考えられている40代以降でも約4人に1人、70歳以降の男性では半数に近い方が糖尿病または糖尿病予備軍と言うことになります。
寿命ではなく健康寿命が重要
人生100年時代で「70歳で糖尿病になったからと言って、寿命はほとんど残っていない」と言ってしまうのは、もう時代遅れです。
2001~2010年の10年間の日本人の糖尿病患者の平均年齢は、男性が71.4歳、女性が75.1歳で、その前の10年間に比べ、男性で3.4歳、女性で3.5歳延び、30年前の調査に比べると、男性で8.3歳、女性で10.2歳延びたことが、日本糖尿病学会の「糖尿病の死因に関する調査委員会」による調査で明らかになった。
(※引用元 糖尿病の患者数・予備群の数 国内の調査・統計 糖尿病ネットワーク)
注意して頂きたいのは、上記の年齢は「糖尿病患者の平均年齢」であり、「糖尿病患者の平均寿命」ではないと言うことです。
上記の数字が平均年齢であれば、糖尿病患者の70歳時の平均余命は短くはないと言うことは容易に想像ができると思います。さらに、医療の進歩により、今後この平均年齢が延びていくのは確定した未来であると言えます。
糖尿病の最も恐ろしい点は、糖尿病により引き起こされる病気です。この病気により、健康寿命は著しく短くなります。
寿命は長いのに、健康寿命は短くなるのです。
多くの人にとって、人生において重要なのは「単なる寿命」ではなく、「健康寿命」であると思います。
つまり、健康寿命を延ばしたければ、糖尿病を予防し、既に糖尿病である方は血糖値を適正範囲に保ち、当然のことですが生活習慣を改善していくことが非常に重要なのです。
そして、上記より糖尿病になる前である、30代や遅くとも40代から対策を始めることが賢明であると言えます。