本当に!?糖尿病を放置している患者は40代男性で約半数!

糖尿病・放置

糖尿病は放置されやすい病気として有名ですが、実際どのくらいの人が放置してしまっているのでしょうか?

「放置されやすい」病気であると言うことは、「放置しても大丈夫」であると言うことなのでしょうか?

放置することで体内でどのようなことが起こるのか解説しています。

糖尿病を放置している患者は男女とも減少傾向にある

JIN
おっ!ペン太君!
そう言えば、この前健康診断で血糖値が高いって言われたって言ってたけど、あれから受診はしたの?
ペン太
あー、こんにちは。
いや、いろいろと忙しくてまだ受診できてないんだよね~。
何も症状がないから、ついつい後回しにしちゃってて・・・。
でも、糖尿病は放置しちゃってる人も多いんでしょ?

平成28年「国民健康・栄養調査」の結果 |厚生労働省」によれば、「糖尿病が強く疑われる者」における治療の状況は、平成9年では男性で48.9%、女性で41.5%ででしたが、平成28年では男性で78.7%、女性で74.1%に増加しており、調査をする度に治療状況は改善していると言えます。

「糖尿病が強く疑われる者」における治療の状況の年次推移

この治療率の上昇は、健康志向の高まりと特定健診・特定保健指導の効果が現れたのだと思われます。

ペン太
そうなの?(汗)
放置している人が多いって聞くから、ちゃっとくらい後回しにしても大丈夫なのかと思ってたんだけど、やっぱマズイのかな?
JIN
糖尿病を放置してしまっている方の性別や年齢には傾向があるんだよ。
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性別や世代により糖尿病治療を受けている方の割合は大きく変わる

以下の図を見て頂くと、40歳代男性の約半数である48.5%は糖尿病の疑いが強いにも関わらず糖尿病治療を放置していることが分かります。

「糖尿病が強く疑われる者」における治療の状況
ペン太
40代男性では、そんなに治療を受けていない人が多いんだね。
何か理由はありそうだけど、これだけでは分からないね。
JIN
男性の40代と言えば、仕事も家庭も忙しくなかなか時間が取りにくいのは想像できるね。
あと、後述するけど2型糖尿病は最初は自覚症状は出てこないことが多いってのも理由の一つなんじゃないかな。
ペン太
この調査では、30代が対象外になっているから推測でしか話をできないけど、その理由であれば30代男性も放置している人は多そうだね。

全体的に年齢の上昇とともに治療率も上昇傾向にありますが、よく見ると50歳代女性においても若干治療率が落ちています。

50歳代女性では33.5%の方は治療を受けておらず、約3人の1人が糖尿病の疑いが強い状態でありながら放置してしまっています。

このように、総数における糖尿病の治療率だけを見ると、年々糖尿病治療に対する意識が高まっているように思えますが、特定の性別や世代では、まだまだ治療率は高いとは言えません。

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糖尿病であっても血糖値を適正範囲にコントロールできれば合併症は抑制できる

糖尿病を放置している方は、少なくとも特定の性別や年代を見るとまだまだ多いことがお分かりいただけたと思います。

では、糖尿病を放置してはいけない理由は何なのでしょうか?

糖尿病を放置してはいけない最大の理由は、「糖尿病の合併症」にあります。

合併症とはある病気にかかっている時に、その病気に関連して発生する他の病気のことです。

糖尿病では血糖値が高い状態がどのくらい続くと、どのような合併症が出やすくなるのか大体分かっています。

つまり、人生において血糖値が高い状態の期間があれば、それは体内で記憶されていき、この期間が一定のラインを超えると合併症が現れやすくなるのです。

糖尿病の合併症については後日詳細を投稿する予定ですが、ここではアメリカで行われた1441人の1型糖尿病を対象にした調査1) 2)の結果が分かりやすいのでご紹介しておきます。

この調査では、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)を約9.0%の群と約7.0%の群に分けて6.5年間で「神経障害(しびれや麻痺、痛みなど)」がどの程度現れるか比較検討しています。

HbA1cとは
血液検査により判定することができます。血液検査をした日から1~2ヶ月前くらいの血糖値の状態を推定できます。糖尿病診療ガイドラインでは6.5%以上で「糖尿病型(血糖値が高めの状態)」と判断することとなっていますが、あくまでも血糖値の適正範囲はその人により異なりますので、全ての方が6.5%以下にしなければいけない訳ではありません(血糖値の適正範囲はかかりつけの医師に確認するようにしましょう)。」

糖尿病の合併症の中で、神経障害は比較的早い段階から現れると言われており、糖尿病の合併症でも最も現れやすい症状の一つだと言われています。

この調査終了時に各群で神経障害が現れた患者は、HbA1c約9.0%の群では約13%、HbA1c約7.0%の群では約5%と言う結果でした。

つまり、HbA1cを9.0%から7.0%に下げることで約60%も神経障害を抑えることができたことになります。

上記の臨床試験は、神経障害の起こりやすさを示したものですが、例え糖尿病を患っていたとしても血糖値を適正範囲にコントロールすることができれば様々な糖尿病の合併症を予防することができ、健常な方と同じような生活を送っていくことができます。

ペン太
血糖値が高い期間は、体内で記憶されてるから、ダイエットの広告みたいに「後でなかったことにする」ことはできないんだね。
早めに血糖値を下げておくことが、将来的に発症しやすい合併症を発症しなくしたり、発症したとしても先延ばしすることができるんだね。
JIN
ペン太君も、忙しくても是非早めに受診してね。
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まとめ

このように、総数における糖尿病の治療率だけを見ると、糖尿病治療に対する意識が高まってきているように思えますが、特定の性別や世代では、まだまだ治療率は高いとは言えません。

また、総数における糖尿病治療率を見ても、約4人に1人は糖尿病の疑いが強いにも関わらず治療を受けていない状況であり、このような方々は、みすみす糖尿病の合併症により自らの健康寿命を短くし、「生活の質」を大きく低下させようとしています。

生活の質とは
quality of life」の略で、個人が社会生活を送る上で、いかに人間らしい幸福感のある生活を送れているかと言うことです。

糖尿病の合併症は本当に恐い病気ですが、適切な治療により血糖値を正常範囲内にコントロールすることができれば、合併症を起こしてしてしまう確率はかなり下げることができ、健康な方と変わらず天寿を全うすることができます。

この記事を読んで下さった方が、一人でも糖尿病予防の意識が高まり、治療を積極的に受けるようになって頂けると幸いです。

 

〈参考文献〉
1)The Diabetes Control and Complications Trial (DCCT) Research Group : The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus.N Engl J Med 329 : 977-986,1993
2)The Diabetes Control and Complications Trial (DCCT) Research Group : The effect of intensive diabetes therapy on the development and progression of neuropathy.Ann Intern Med 122 : 561-568,1995

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