日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2016」において、1型糖尿病と2型糖尿病を含めて、糖尿病は大きく4つに分類されます。
1型糖尿病に分類される糖尿病
1型糖尿病の半数以上は、両親が糖尿病などと言った遺伝的な要因があり、そこにウィルス感染などの環境的な要因が重なることで、自己免疫異常などを引き起こし、膵臓のβ細胞の80~90%が破壊され発症します。
1型糖尿病では、インスリンがほとんど分泌されなかったり、全く分泌されない状態になります。
1型糖尿病が発見されるきっかけになる症状は、高血糖症状による異常なのどの乾き、水分をよくとる、尿量が多い、頻尿、疲れやすい、体重減少などです。
10~20代の若い方に突然発病する場合が多いですが、高齢者でも1型糖尿病を発症することがあります。
体形はやせ型の方に多く見られます。
1型糖尿病は、β細胞の破壊の原因により「自己免疫性」と「特発性」に分類され、1型糖尿病の進行の速さにより「緩徐進行」「劇症」「急性」に分類されます。
β細胞の破壊の原因による分類
自己免疫性
血液中に自らの膵臓のβ細胞を攻撃する自己抗体が認められるものは「自己免疫性」に分類されます。
(自己抗体とは、簡単に言うと自分の細胞にダメージを与えるようにさせる物質です。)
特発性
自己免疫性とは逆に、自己抗体が認められないものは「特発性」に分類されます。
ただし、自己抗体が認められない場合であっても、遺伝子の異常などの他の原因が特定された糖尿病などは特発性には含めないこととなっています。
それだと急激に血糖値が高くなっちゃいそうだね。
進行の速さによる分類
緩徐進行(SPIDDM)
数年~数十年かけて徐々にインスリンの分泌が低下していくタイプです。
糖尿病を発症してすぐは食事療法と運動療法で血糖コントロールができます。
しかし、徐々にインスリンの分泌は低下していくため、間違って2型糖尿病と診断されることがあります。
「GAD抗体」あるいは「ICA抗体」と言う抗体が確認できるため、通常自己免疫性に分類されます。
劇症
糖尿病症状(口の渇きや、水分を多量にとる、尿量が増えるなど)が出現して、わずか数日でインスリンが低下していくタイプです。
劇症1型糖尿病では以下のような特徴があります。
・発症する90%以上が20歳以上である
・約70%の患者さんで直前に風邪(発熱)の症状がある
・妊娠をして発症した1型糖尿病のほとんどは劇症1型糖尿病
・すい臓の自己免疫抗体はみられない
(引用元 「糖尿病にはどんな種類があるの?」
通常、特発性に分類されます。
急性
インスリン分泌の低下の速度は「緩徐進行性」と「劇症」の中間に位置付けられています。
数週間から数か月かけてインスリン分泌が低下します。
急性発症では、膵臓のβ細胞を攻撃する自己抗体があることが多く、大半が上記の「自己免疫性」に分類されます。
2型糖尿病にはどんな特徴があるの?
2型糖尿病に分類される糖尿病(1型糖尿病との違い)
日本人では2型糖尿病が糖尿病全体の約95%を占めており、残りの約5%のほとんどは1型糖尿病に分類されます。
つまり、日本人のほとんどは1型と2型の糖尿病に分類されると言えます。
2型糖尿病でも、遺伝的な要因に環境的な要因が加わることにより、インスリン分泌障害やインスリン抵抗性によるインスリンの作用不足が起こり、その結果、2型糖尿病を発症すると言われています。
2型糖尿病における環境的な要因には以下のようなものがあります。
- 肥満
- 過食
- 運動不足
- ストレス
- 加齢
1型糖尿病と違い、2型糖尿病では40代以降の中年以降に多く、肥満体型に多いと言う特徴を持ちます。
2型糖尿病では、インスリン分泌障害とインスリン抵抗性の両方を引き起こしやすいですが、どちらをどの程度起こすかは個人差があり、患者様によりその程度には違いがあります。
また、「糖毒性」は2型糖尿病を説明する際には避けて通れないものですが、2型糖尿病になることで糖毒性になりやすく、糖毒性になることで2型糖尿病を悪化させると言う悪循環が形成されやすいです。
2型糖尿病は1型糖尿病に比べて、糖尿病の進行が遅いため、糖尿病の初期には自覚症状は何も起こらないことが多く、健康診断などで指摘されても何も自覚症状がないため放置してしまう方が非常に多いと言う違いがあります。
症状だけでなく、血管の動脈硬化も一度進行してしまうと治すことはできません。
やっぱり早く受診しないとね。
しかし、2型糖尿病は食事や運動などの生活習慣の改善で、血糖値を改善しやすいと言った特徴もあります。
このため、ご両親が糖尿病である方や妊娠糖尿病になったことがある方など、将来的に糖尿病になりやすい方は生活習慣を見直しておくことで、糖尿病を予防できる可能性が上がります。
また、既に2型糖尿病である方も、食事療法や運動療法は必要不可欠であり、「血糖値の改善により服用している薬の減少」や「生活の質(QOL)の向上」、「健康寿命の延長」などなど様々なメリットがありますので、積極的に行うようにしましょう。
食事療法や運動療法についてはかかりつけの医師に相談をした上で、ご自身にあったものを行うようにしましょう。
その他の特定の機序・疾患による糖尿病
遺伝子の異常
遺伝子技術の進歩により、遺伝子の異常により糖尿病を発症することが分かってきました。
難解な内容になる上に、一般の方が自分の健康を守るために必要な知識ではないため、ここでは取り上げません。
糖尿病を引き起こす疾患や薬などによるもの
疾患や薬物などの影響で糖尿病になることもあります。
これには以下のようなものがあります。
- 膵臓の疾患
- 内分泌系の疾患
- 肝臓の疾患
- 薬の使用
(例えば、統合失調症の薬の一部には血糖値を上昇させる副作用があります。血糖値を上昇させやすい薬については、また詳細を後日投稿する予定です。) - 科学物質への暴露
- ウィルス感染
- 種々の遺伝的症候群などに伴う糖尿病
妊娠糖尿病
妊婦中に関連する糖尿病については、一つの記事で書ききれる量ではないため、簡単に説明しておくと、妊娠中の糖尿病には3つの分類があります。
(また機会があれば後日詳細な記事を投稿します。)
妊娠糖尿病(GDM)
糖尿病の4つの分類で、4つ目に属するのが「妊娠糖尿病」です。
妊娠糖尿病は、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン」では以下のように定義されています。
妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常であり、妊娠中の明らかな糖尿病、糖尿病合併妊娠は含まない
重要なポイントは、下記の「妊娠中の明らかな糖尿病」とは違い、健常な方が妊娠の影響により血糖値が高くなっている状態を指します。
このため、妊娠糖尿病の診断基準は妊娠中の明らかな糖尿病よりも血糖値が低めに設定されています。
妊娠糖尿病になった方は、将来的に糖尿病を発症する確立が高いと言われています。
妊娠中の明らかな糖尿病
前項の妊娠糖尿病との違いが分かりにくいかと思いますが、「妊娠中の明らかな糖尿病」は読んでその通り、妊娠中に糖尿病を発症することです。
妊娠糖尿病は「糖尿病に至っていない糖代謝異常」であり、妊娠糖尿病の方が症状は軽いと言えます。
「妊娠中の明らかな糖尿病」は、「妊娠前に見逃されていた糖尿病」と、「妊娠中の糖代謝の変化の影響を受けた糖代謝異常」と、「妊娠中に発症した1型糖尿病」が含まれます。
糖尿病合併妊娠
「糖尿病合併妊娠」とは、妊娠前に糖尿病を発症していて、糖尿病を持つ状態で妊娠したものを指します。
糖尿病合併妊娠の診断基準は、「妊娠前にすでに診断されている糖尿病」と、「確実な糖尿病網膜症があるもの」の二つが定められています。
この年齢だから2型糖尿病だと思うけど、本当に1型糖尿病じゃないのかな?