「高血圧患者が注意すべきもの~まとめ~」で高血圧症に注意が必要な主な薬を列挙しましたが、今回はそのうちの糖尿病治療薬であるチアゾリジン系の薬が、血圧を上げてしまう副作用があることについて書いていきたいと思います。
糖尿病患者と高血圧患者の関係
前回と同じような流れで恐縮ですが、まずは糖尿病患者と高血圧患者が、どのような関係にあるのか見てみたいと思います。
平成28年「国民健康・栄養調査」によれば、「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000万人、「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1,000万人と推計されています。
糖尿病患者は、20歳以上の年齢で「糖尿病が強く疑われる者」と、「糖尿病の可能性を否定できない者」を合わせると、男性で28.5%、女性では21.4%の方が当てはまります。
「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」の合計を年齢別の割合で見ると以下の表のようになります。
20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~69歳 | 70歳以上 | |
総数 | 1.9 | 4.2 | 15.4 | 39.5 | 61.5 | 79 |
男性 | 0.7 | 2.8 | 8.5 | 23.7 | 34.3 | 42.0 |
女性 | 1.2 | 1.4 | 6.9 | 15.8 | 27.2 | 37.0 |
(※参考 平成28年「国民健康・栄養調査」より作成)
これに対して高血圧患者は、「40代の高血圧患者はどのくらいいるの?意外な事実が分かった話」でも書きましたが、未治療の高血圧患者を含めると国内に約4300万人いると推計されています。
高血圧患者の年齢別の割合は以下の通りです。
(分かりにくい表記で恐縮ですが、糖尿病患者の表の割合では分母が男女の総数となっていますが、高血圧患者の表の男性と女性の割合では、分母が男女別の人口となっています。)
30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~69歳 | 70歳以上 | |
総数 | 8.7 | 22.2 | 40.0 | 56.3 | 71.5 |
男性 | 19.3 | 35.8 | 52.8 | 67.3 | 72.2 |
女性 | 2.8 | 15.7 | 33.1 | 48.1 | 70.9 |
(※参考 平成27年国民健康・栄養調査|第2部身体状況調査の結果より)
これらを見て頂くと、糖尿病患者と高血圧患者がいかに多いかと言うことと、加齢とともに両者が同じように増加していると言うことが分かると思います。
つまり、何が言いたいかと言うと、高血圧治療薬と糖尿病治療薬は使用される年齢層が似通っていて、一緒に使用されることが多いと言うことなのです。
チアゾリジン系とは
糖尿病の治療薬であるチアゾリジン系薬剤は、「インスリン抵抗性改善薬」とも言われます。
現在、チアゾリジン系に属している薬剤は1種類のみで、一般名(主成分の名称)が「ピオグリタゾン」、先発医薬品(ジェネリックではない薬)の名称が「アクトス」と言う名称の薬です。
(2018年4月16日時点)
ピオグリタゾンはインスリンの効き目を改善することで血糖値を低下させますが、体液量を増加させるため血圧上昇の副作用が起きることがあります。
このため、家庭でも血圧を自己測定し、ピオグリタゾンを服用後に血圧が上昇していることがあれば、かかりつけの医師に伝えるようにしましょう。
糖尿病治療薬の中でも、ピオグリタゾンは処方頻度が比較的高い薬なので注意が必要です。
チアゾリジン系(ピオグリタゾン)の血圧上昇以外の副作用
ピオグリタゾンの血圧上昇以外の副作用は、体重が増えやすくなったり、むくみが出ることがあります。
また、心不全を起こしたことがある方には使用できないことになっています。
これらは、ピオグリタゾンが体液量を増加させることと、インスリンの効きを良くする事により脂肪を増加させることによるものです。
海外での臨床試験で、長期(2年以上)で服用している患者様で膀胱がんのリスクがわずかに上がったとの報告がありますが、これは国内の臨床試験結果ではなく過剰な心配は不要です。
むしろ、薬を怖がって自己判断で服用を中止してしまうことで、血糖値が上昇してしまう事の方が、あらゆるがんのリスクを高めてしまうため危険です。
(血糖値が高いと、がんにもなりやすいと言われています。)
日頃から自己観察をしておき、万が一、血尿や頻尿、排尿痛が出ることがあればかかりつけの医師に相談するようにして下さい。
過去に膀胱がんと診断されたことがある方は、そうではない方よりリスクが高いようですので、かかりつけの医師に伝えていないようであれば伝えるようにして下さい。
糖尿病の治療をされている方は、複数の糖尿病治療薬を使用している方が多いですが、ピオグリタゾンは他の糖尿病治療薬と併用した場合には、低血糖症状(空腹感、発汗、動悸、手指の震え、眠気、脱力感など)による副作用が出現しやすくなります。
万が一、低血糖症状が出た場合には、すぐに飴やジュース、ブドウ糖などを摂取し、改善するようにして下さい。
低血糖症状が起きた時に、「少し休んでいれば治るだろう」と安易に考えると致命的な危険があります。
飴やブドウ糖などは、すぐに摂取できるように常に携帯しておくようにしましょう。
ただし、α-グルコシダーゼ阻害薬と言われる糖尿病治療薬を服用している場合は、低血糖症状が出た時に、飴やジュースを摂取しても改善できないため、ブドウ糖を摂取しなければいけません。
以上、「糖尿病治療薬の一部には血圧上昇の副作用がある」でした。
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