「高血圧患者が注意すべきもの~まとめ~」で血圧を上げる恐れがあるものには、様々なものがあると書きました。
この中でも、今回は医療用医薬品の「片頭痛治療薬の一部」が血圧を上げることを書きたいと思います。
片頭痛治療薬
片頭痛は20~40歳代の女性に多く、日本人の約8.4%の方が片頭痛患者だと言われています。
頭痛が頻繁にある方は、よくご自身の症状を片頭痛だと思い込んでいらっしゃる事が多いですが、実は緊張型頭痛であることが少なくありません。
緊張型頭痛は日本人の約22.4%の方が持っていると言われています。
緊張型頭痛では、一般的に解熱鎮痛薬を使用することが多いですが、この解熱鎮痛薬でも血圧は上昇しやすくなります。
(関連記事 「血圧を上げる作用のある解熱鎮痛薬(NSAIDs)とは」)
ここでは、片頭痛治療で使用される医療用医薬品を解説します。
医療用医薬品で用いられる片頭痛治療薬には以下のようなものがあります。
- トリプタン系薬剤
- カルシウム拮抗薬
- 麦角アルカロイド
- フェノチアジン誘導体
- 抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム)
「高血圧治療薬を分類別に解説!カルシウム拮抗薬とは?」で、「高血圧症に使用されるカルシウム拮抗薬」を解説しましたが、「片頭痛で使用されるカルシウム拮抗薬」は、主に作用の及ぶ器官が脳血管であるため高血圧症で使用されることなく、片頭痛治療薬としてのみ使用されます。
また同様に、麦角アルカロイドは「パーキンソン病治療薬で使用される麦角アルカドイド」と「片頭痛治療薬として使用される麦角アルカロイド」があります。
ここでの麦角アルカロイドとは片頭痛治療薬の麦角アルカロイドを指し、パーキンソン病治療薬として用いられる麦角アルカロイドには片頭痛治療薬としては用いられることはありません。
(ちなみに、パーキンソン病治療薬の麦角アルカロイドにも、血圧を上昇させたり低下させたりすることはあります。)
この中でも、高血圧症の方に特に注意が必要な薬はトリプタン系薬剤と麦角アルカロイドです。
トリプタン系薬剤
現在、トリプタン系薬剤は片頭痛治療で第一選択薬(一番最初に使用を検討する薬剤)となっており、多くの片頭痛患者が使用しています。
トリプタン系の薬剤の作用の仕方は、片頭痛発作により過度に拡張した血管を収縮させて、片頭痛を改善すると言われています。
このため、トリプタン系薬剤は血圧を上げてしまう副作用があります。
(血管収縮と血圧上昇の関係は「そもそも血圧とは何か?」をご参照下さい。)
トリプタン系の薬剤を一覧にすると、以下のものがあります。
(12/02/2018)
一般名(※) | 商品名(先発医薬品) |
スマトリプタン | イミグラン |
ゾルミトリプタン | ゾーミッグ |
エレトリプタン臭化水素酸塩 | レルパックス |
リザトリプタン安息香酸塩 | マクサルト |
ナラトリプタンン塩酸塩 | アマージ |
(※ 一般名とは、薬剤の主成分の名称となります。)
トリプタン系の血圧上昇以外の主な副作用
- 胸部不快感
- 咽頭灼熱感
- 息苦しさ
- 顔のほてり
- 脱力感
- 動悸
などがありますが、一過性のもので使用を継続すると副作用が軽減したり消失するものが多いため、危険性が高いものはありません。
麦角アルカロイド
麦角アルカロイドも血圧を上昇させる副作用があります。
トリプタン系薬剤を使用しても頻回に頭痛が起こる場合に使用を検討されます。
(一般的には、麦角アルカロイドよりもトリプタン系薬剤の方が、片頭痛に対して有効で副作用は少ないと言われています。)
片頭痛治療における麦角アルカロイドは以下の一つだけです。
一般名 | 商品名(先発医薬品) |
酒石酸エルゴタミンの配合剤 | クリアミン塩酸塩 |
以前は、ジヒデルゴットと言う製品がありましたが、ジヒデルゴットは販売中止となり、2017年4月以降は処方箋により調剤できなくなりました。
クリアミン塩酸塩の血圧上昇以外の副作用は吐き気が多く、吐き気が起こる前に制吐薬を服用するように医師から指示される場合もあります。
クリアミン塩酸塩は妊娠中、授乳中の方や、心臓弁膜症などがある方は服用できません。
トリプタン系薬剤や麦角アルカロイドを使用する際の注意点
高血圧症があり頭痛を頻繁に繰り返している場合などでは、自己判断で市販薬の鎮痛剤を飲み続けるのではなく、まずは受診をすることをお勧めします。
しかし、このような場合でも、片頭痛の治療のためにトリプタン系薬剤や麦角アルカロイドを使用しなければいけない時もあります。
高血圧症はあるが、トリプタン系薬剤や麦角アルカロイドを服用しなければいけない場合は、血圧を家庭で自己測定し、薬を服用後に普段よりも血圧が上昇していることがあれば、受診してかかりつけの医師に相談するようにしましょう。
以上、「片頭痛治療薬で血圧を上げる作用があるもの」でした。
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