今回は高血圧治療において最も重要な薬剤の一つである「アムロジピンベシル酸塩」(以降、アムロジピン)が、どのような薬剤で、他のカルシウム拮抗薬と比較してどのような特徴があるのか、一般の方にも分かりやすく解説したいと思います。
「そもそもカルシウム拮抗薬って何?」と言う方は、以下の記事をご参照下さい
(ここでの解説は、2017年10月22日時点のノルバスクの添付文書を一般の方でも分かりやすく簡略化・要約・補足したものであり、難解な点や少数の方にしか該当しないような点などは、著者の判断により省略させて頂いています。また、先発医薬品とジェネリック医薬品では、一部添付文書の記載に相違がある場合もあります。ジェネリック医薬品の正確な情報や、各製品の詳細な点につきましては、添付文書情報メニューで当該医薬品を検索してご確認下さい。)
アムロジピン(ノルバスク、アムロジン)とは
アムロジピンは高血圧治療薬でおそらく最も処方されている薬(※)です。
(※ ジェネリック医薬品が発売されるまでは、先発品医薬品が高血圧治療薬では世界一の売り上げでした。現在はジェネリック医薬品の発売により、先発品医薬品の売り上げが落ち、売り上げランキングからはどの程度アムロジピンが使用されているのか推測することが困難になりました。しかし、私の経験からの推測で恐縮ですが、おそらく最も処方されている高血圧治療薬であると思われます。)
アムロジピンは一般名(主成分名)で、商品名は「ノルバスク」と「アムロジン」です。
特徴
前述した通り、アムロジピンは「カルシウム拮抗薬」と言う分類の高血圧治療薬です。
アムロジピンがよく処方されることは既に書きましたが、なぜこれほどよく処方されるのでしょうか?
カルシウム拮抗薬は血管拡張作用があるため、これによる副作用(頭痛や動悸など)が出現しやすくなります。
そして、この血管拡張作用が急激であればある程、頭痛や動悸などが出やすくなります。
しかし、アムロジピンはゆっくりと効果が発現するため、カルシウム拮抗薬の中では頭痛や動悸などが出にくいことや、効果の持続時間が長いため、服用回数を減らすことで飲み忘れを減らすことができたり、1日1回の服用でも朝方の血圧上昇や狭心症発作を抑制できることが長所と言えます。
また、アムロジピンは90%以上が肝臓で代謝されるため、腎機能障害のある方でも使用しやすいです。
その他、カルシウム拮抗薬はグレープフルーツジュースの摂取で効果が増強したりや副作用が出現しやすくなりますが、アムロジピンはグレープフルーツジュースの影響を受けにくいと言う特徴があります。
服用できない方
アムロジピンを服用できない方は妊婦となります。
動物実験でのみですが、妊娠末期にアムロジピンを投与すると妊娠期間や分娩時間が延長することが認められています。
用法・用量
高血圧症のみならず、狭心症でも処方されます。
作用持続時間が長いため、通常1日1回で服用するようになっていますが、1日1回の服用では薬剤服用前のタイミングで血圧上昇がみられる方などの、薬剤の効果が24時間持続していないと考えられる方には、1日2回に分けて服用することもあります。
成人では、通常1日10mgまで服用することができます。
なお、年齢、症状により医師の判断で適宜増減することがあります。
(当然ですが、自己判断で服用量を変更することはしないようにしましょう。 ここで記載している用法・用量は、医師の判断の下で増減できる量です。)
注意事項
アムロジピンの注意事項は、以下のようなものがあります。
- 肝機能障害のある患者様では、副作用が強まることがあるので、特に高用量(1日10mg)服用時には注意が必要です。
- 重篤な腎機能障害のある患者様では、血圧低下に伴い腎機能が低下することがあります。
- 高齢者では、生理機能が低下しているため、慎重に投与します。
- 血圧の下がりすぎによる、めまいやふらつきがでることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際は注意が必要です。
- 効果持続時間が長く、服用中止後も緩徐な血圧低下作用が認められるため、アムロジピンを服用中止後に他の血圧を下げる医薬品を使用するときは、低血圧が出ることがあるので注意します。
併用には注意が必要なもの
アムロジピンと併用する際に注意が必要なものには以下のようなものがあります。
アムロジピンの効果や副作用が増強しやすいもの
〈CYP3A4阻害薬〉
エリスロマイシン (エリスロシン)
ジルチアゼム (ヘルベッサー)
イトラコナゾール (イトリゾール) など
代謝酵素の一つです。
アムロジピンは体内で「CYP3A4」により代謝され効果が失われていきます。
「CYP3A4阻害薬」とは「CYP3A4」の働きを抑える薬のことで、アムロジピンと「CYP3A4阻害薬」を併用すると、「CYP3A4」の働きが抑えられてしまうため、アムロジピンの効果や副作用が強く現われやすくなります。
逆に、後述する「CYP3A4誘導剤」とは「CYP3A4」の働きを増強するため、アムロジピンと併用すると、アムロジピンがすぐに代謝されてしまい、効果が弱くなります。
グレープフルーツジュース
(カルシウム拮抗薬はグレープフルーツジュースの影響を受けやすいものが多いのでよくメディアで摂取しないように警告されていますが、アムロジピンは比較的影響を受けにくいと言われており、少量の摂取は問題がないとされています。ただし、大量に摂取するのは避けるようにしましょう。)
アムロジピンの効果や副作用が低下しやすいもの
〈CYP3A4誘導薬〉
リファンピシン(リファジン) など
併用した薬の効果や副作用が増強しやすいもの
シンバスタチン(リポバス)
タクロリムス(プログラフ)
起こりやすい副作用と頻度
副作用の主なものは、ほてり(熱感、顔面潮紅等)(0.8%)、めまい・ふらつき(0.7%)、頭痛・頭重(0.6%)、動悸(0.3%)などでした。
(開発時及び承認後6年間の調査)
また、高用量(10mg)で服用した方には、浮腫(むくみ)が高い頻度(3.3%)で認められ、1日5mgを投与した方では0.6%に現れました。
そのうち継続して1日10mgを長期服用した群では、服用開始後52週までに24.6%に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。
副作用の主なものは浮腫(10.4%)、めまい・ふらつき(2.99%)などでした。
(高用量(10mg)投与群を含む第III相試験及び長期投与試験)
その他の副作用
肝臓
0.1~1%未満
ALT(GPT)、AST(GOT)の上昇、ALP、LDHの上昇、肝機能障害
(ALT、AST、ALT、LDHは全て血液検査で判定されます。ALT、ASTが異常な場合は肝機能障害の疑われます。ALPが異常な場合は肝機能障害や胆道系の疾患が疑われます。LDHは肝臓や腎臓、心筋、骨格筋、赤血球などに多く含まれており、これらの臓器などに損傷があるとLDHが血液中で上昇します。)
循環器
0.1~1%未満
浮腫、ほてり(熱感、顔面潮紅等)、動悸、血圧低下
精神・神経系
0.1~1%未満
眩暈・ふらつき、頭痛・頭重
消化器
0.1~1%未満
心窩部痛、便秘、嘔気・嘔吐
(心窩部とはみぞおち部分を指します。)
泌尿・生殖器
0.1~1%未満
BUN上昇
(BUNは血液検査で判定され、腎障害などで高値を示します。)
過敏症
0.1~1%未満
発疹
その他
0.1~1%未満
全身倦怠感
重大な副作用
重大な副作用の名称については、普段あまり耳にすることがないものが多いと思います。
本記事内で各副作用について詳細な説明をすると、膨大な量になってしまうため、改めて主な副作用については解説をしたいと考えています。
ここでは、一般的に認知度が高くないと思われるもののみ、簡単な説明をつけています。
アムロジピンの重大な副作用と頻度は以下の通りです。
- 劇症肝炎(頻度不明)、肝機能障害、黄疸(0.1%未満)
(劇症肝炎は肝機能障害が急激に進行する疾患で、肝機能障害では黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)や食欲不振、倦怠感がでて、進行すると昏睡状態などを起こします。) - 無顆粒球症(頻度不明)、白血球減少(0.1%未満)、血小板減少(頻度不明)
(無顆粒球症では発熱、のどの痛み、全身の倦怠感などが出やすくなります。白血球が減少すると免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。血小板減少が起きると、鼻血が出やすくなったり、アザができやすくなったりします。) - 房室ブロック(0.1%未満)
(徐脈などがが出やすくなります。) - 横紋筋融解症(頻度不明)
(筋肉痛、脱力感、尿が赤褐色になるなどが出やすくなります。)
頻度が不明となっているものでも、頻度が高いものはありません。
体調に何も変化がないのであれば安心して服用を継続するようにお願いします。
妊婦や授乳婦の服用について
妊婦又は妊娠している可能性のある方は服用できません。
授乳中の方の服用は避けることが望ましいですが、やむを得ず服用する際は、授乳を避けた方がよいです。
(母乳中へ薬の成分が移行することが報告されています。ただし、医師の判断で授乳を継続したまま服用を継続することもあります。)
妊娠・授乳中の高血圧治療薬については、以下の記事をご参照下さい。
錠剤の分割後の保管方法
アムロジン錠をやむ無く分割して調剤(※)されている場合は、分割後は早めに服用した方がよいです。
(※ 例えば、1.25mgの錠剤は発売されていないため、2.5mg錠を半分にして調剤されている場合など)
分割後に保管する場合には、遮光の上30日以内に服用します。
アムロジンOD錠も分割後は早めに服用すべきです。
分割後やむを得ず保存する場合には、湿気、光を避けて保存します。
OD錠は錠剤と違い、口の中で唾液で溶かして服用できますが、錠剤と同様に水で飲みこむこともできます。
以上、「アムロジピン(ノルバスク・アムロジン)のトリセツ」でした。
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