ロサルタンカリウム(ニューロタン)とは
「ARB」に属する薬の一つであるロサルタンカリウム(以降、ロサルタン)について書きたいと思います。
(※ ここでの解説は、2017年10月22日時点のニューロタンの添付文書を一般の方でも分かりやすく簡略化・要約・補足したものであり、難解な点や少数の方にしか該当しないような点などは、著者の判断により省略させて頂いています。また、先発医薬品とジェネリック医薬品では、一部添付文書の記載に相違がある場合もあります。ジェネリック医薬品の正確な情報や、各製品の詳細な点につきましては、添付文書情報メニューで当該医薬品を検索してご確認下さい。)
ニューロタンは商品名で一般名(主成分の名称)はロサルタンカリウムです。
ロサルタンの属するARBについて知りたい方や、ロサルタンには他の医薬品との合剤も発売されていますので、確認されたい方は、「高血圧治療薬を分類別に解説!ARB・ACE阻害薬とは?」を参考にして下さい。
特徴
ロサルタンは国内で最初に発売されたARBで、「高血圧症」以外に「高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症」にも保険適用(保険が適用となり、全額を支払う必要はなく自己負担分のみ支払い)が認められています。
「高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症」とは高血圧があり、尿検査で尿蛋白が陽性(つまり腎機能障害が疑われる状態)でかつ、2型糖尿病(過食、運動不足、ストレスなどの生活習慣の乱れにより発症する糖尿病で、糖尿病患者の約90%の方が該当)で、糖尿病性腎症を合併している方のことです。
以下の特徴は、その目的のみでロサルタンを使用する場合には適応外使用(基本的に保険適用が認められていないもので、一部の例外を除いて全額自己負担となるもの)となります。
ただし、高血圧症の患者様に使用する場合で、以下のメリットも享受しようとする場合であればもちろん保険適用となります。
ロサルタンは血液中の尿酸値を低下させる作用が知られています。
高血圧患者では、尿酸値も高い方が多く、高血圧症があり尿酸値も高めの方にはロサルタンは適していると言えます。
また、ネフローゼ症候群の患者様が服用することで、蛋白尿が減少した症例も多数あります。
(蛋白尿が減少すると言うことは、一般的に腎機能障害が改善傾向であると言えます。)
さらに、てんかんを有するラットにロサルタンを投与することで、けいれん回数を減少させることが報告されています。
片頭痛とは、頭痛を繰り返す疾患ですが、頭痛は4~72時間続き、多くは片側性、拍動性です。
吐き気や嘔吐が出現しやすく、発作中には光や音や匂いも不快に感じます。
ロサルタンは、片頭痛患者の片頭痛発作を抑制する効果が報告されています。
(※参考 山田洋司. 片頭痛にロサルタンの服用が有効であった2例. 高知医師会医誌 2009;14:121-4.)
服用できない方
まず、ARBは妊婦の方は服用できませんので、こちらのロサルタンも妊婦の方には使用できません。
理由は、「妊婦や授乳婦の服用について」の項目で記載しています。
二つ目は、重篤な肝障害がある患者様です。
理由は、「注意事項」で解説しています。
三つ目は、ラジレス(※)を服用してしている糖尿病患者です。
(ただし、他の高血圧治療では血圧が著しく不安定、または正常範囲に入らない患者様は使用を検討します。)
(※ ラジレスについては「高血圧治療薬にはどのような種類があるか?」をご参照下さい。)
これは、ロサルタンを服用中の糖尿病患者がラジレスを服用できないと言うことと同義です。
なぜこのように決められているのかと言うと、非致死性脳卒中(致命的ではない脳卒中)、腎機能障害、高カリウム血症や低血圧のリスク増加が報告されているためです。
用法・用量
高血圧症で使用する場合
通常、成人には1日1回で服用し、1日25~50mgを服用します。
(薬の効果が24時間持続しない方、つまり1日1回で服用した場合に薬剤の服用前の血圧値が高くなってしまう方に対しては、医師の判断で1日2回で服用する場合もあります。)
1日最大100mgまで増量することができます。
なお、年齢、症状により医師の判断で適宜増減することがあります。
(当然ですが、自己判断で服用量を変更することはしないようにしましょう。 ここで記載している用法・用量は、医師の判断の下で増減できる量です。)
高血圧や蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症で使用する場合
ロサルタンは、高血圧症で主に使用される薬剤ですが、高血圧や蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症でも使用されることがあります。
通常、成人には1日1回、1回50mgで服用します。
なお、血圧値を見ながら1日最大100mgまで増量することができます。
ただし、過度の血圧低下を起こす恐れのある患者様などでは1日25mgから服用します。
注意事項
- 高血圧や蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症に対して使用する場合は、万が一服用を始めて行った血液検査で、血清クレアチニン値(※1)が前回の検査値と比較して30% (あるいは1mg/dL) 以上増加した場合など(※2)は減量あるいは服用を中止することを考慮することとなっています。
(※1 血清クレアチニン値は腎臓がどの程度働いているのかをみる指標です。)
(※2 他にも条件はありますが、理解するには専門的な知識が必要となるためここでは割愛します。詳細は、「添付文書情報メニュー」をご参照下さい。) - 腎動脈狭窄症の患者様では、急速に腎機能を悪化させるおそれがあるので、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けることとなっています。
- 高カリウム血症(四肢のしびれや不整脈、吐き気などが出やすい)が出現しやすくなります。
- 腎機能障害のある方や、血糖値の変動が大きい糖尿病患者などでは、血清カリウム値が高くなりやすいため、特に高カリウム血症に注意しなければいけません。
- 肝機能障害のある患者様では、ロサルタンの代謝が遅れることで、副作用が増強してしまうことがあります。
- 脳血管障害のある患者様では、血圧を低下させることで脳の血流量を低下させて、脳血管障害を悪化させてしまうことがあります。
- 腎・肝機能障害のある方には、腎・肝機能が悪化することがあるため、少量から開始するなど慎重に使用します。
- 高齢者では、生理機能が低下しているため、慎重に投与します。
(高齢者の使用に関しては、「高齢者が高血圧の薬を服用する際に注意すべき5つの事」も参考にして下さい。) - 手術前24時間は投与しないことが望ましいです。
- 一過性の血圧低下を起こすおそれがあります。低血圧になることで、めまい、ふらつきがあらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意しましょう。
- 以下の方には、低血圧がでやすくなるため注意して下さい。
- 厳重な減塩療法中
- 血圧を下げる効果がある利尿薬を服用中
- 血液透析中
併用には注意が必要なもの
血清カリウム値が上昇する恐れがあるもの
- カリウム保持性利尿剤
スピロノラクトン(アルダクトンA)、トリアムテレン(トリテレン)、カンレノ酸カリウム(ソルダクトン) - カリウム補給剤
塩化カリウム(スローケー)、L-アスパラギン酸カリウム(アスパラカリウム、アスパラギン酸カリウム)、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(アスパラ)など
腎機能障害、高カリウム血症、低血圧を起こす恐れがあるもの
- アリスキレンフマル酸塩(ラジレス )
- ACE阻害薬
エナラプリルマレイン酸塩(レニベース)、リシノプリル(ゼストリル)、テモカプリル塩酸塩(エースコール)、ペリンドプリルエルブミン(コバシル)など
血圧を下げる作用が減弱する恐れがあるもの
非ステロイド性消炎鎮痛剤
ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、セレコキシブ(セレコックス)、インドメタシン(インテバン)など多数
(※ 非ステロイド性消炎鎮痛剤は、市販薬でも該当するものが多数あります。不明な場合は、医師・薬剤師に確認の上で服用して下さい。)
腎障害のある患者では、さらに腎機能が悪化する恐れがあるもの
非ステロイド性消炎鎮痛剤
ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、セレコキシブ(セレコックス)、インドメタシン(インテバン)など多数
リチウム中毒がでやすくなるもの
炭酸リチウム(リーマス)
(リチウム中毒では、食欲低下、吐き気、下痢、震え、発熱、発汗などの症状が初期に出やすくなります。このような症状が出た場合は受診をお勧めします。)
起こりやすい副作用と頻度
高血圧症で使用する場合
臨床試験で副作用が報告されたのは10.0%であり、主な副作用は頭痛(1.8%)、めまい(1.3%)、嘔吐・嘔気(0.8%)、ほてり(0.7%) でした。
また、主な臨床検査値異常は、ALT(GPT)上昇 (2.7%)、AST(GOT)上昇 (2.1%)、CK(CPK)上昇(2.7%)、総コレステロール上昇(1.6%)、LDH上昇(1.4%)、赤血球減少(1.4%) でした。
(ALT・ASTは血液検査で肝機能をみる指標です。CKは心筋梗塞や筋炎、脳血管障害などを疑う場合に測定し、血液検査で判定されます。LDHは肝臓や腎臓、心筋、骨格筋、赤血球などに多く含まれており、これらの臓器などに損傷があるとLDHが血液中で上昇します。赤血球が減少すると貧血症状が出やすくなります。)
なお、65歳以上の高齢者における副作用発現率は9.6%で、65歳未満の非高齢者群(10.1%) と同様であり、主な副作用はめまい (2.6%) 及び頭痛(1.3%) でした。
高血圧や蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症で使用する場合
臨床試験で副作用は17.2%に認められ、主なものはめまい(4.5%)、高カリウム血症(3.7%)、低血圧(2.5%)、無力症/疲労(1.6%) でした。
(高カリウム血症については注意事項の項を参考にして下さい。)
また、臨床検査値の異常変動は、14.8%に認められ、主なものは血清カリウム上昇(11.9%)、クレアチニン上昇(4.0%)、BUN上昇(1.3%) でした。
(BUNやクレアチニンは、血液検査で腎機能をみる指標です。)
その他の副作用
精神神経系
0.1~5%未満
頭痛、めまい
循環器系
0.1~5%未満
低血圧
肝臓
0.1~5%未満
AST上昇、ALT上昇、LDH上昇など
(ALT、ASTは血液検査で判定され、異常な場合は肝機能障害が疑われます。LDHは肝臓や腎臓、心筋、骨格筋、赤血球などに多く含まれており、これらの臓器などに損傷があるとLDHが血液中で上昇します。)
腎臓
0.1~5%未満
BUN上昇、クレアチニン上昇
(BUNとクレアチニンは血液検査で判定され、腎機能障害などで高値を示します。)
皮膚
0.1~5%未満
発疹
血液
0.1~5%未満
貧血
その他
0.1~5%未満
咳
重大な副作用
ロサルタンの重大な副作用と頻度は以下の通りです。
- アナフィラキシー (頻度不明)
(口内異常感、発汗、蕁麻疹、呼吸困難などが出やすくなります。) - 血管浮腫 (0.1%未満)
(顔面、唇、咽頭、舌などの腫れが出やすくなります。)
- 急性肝炎 (0.1%未満)、劇症肝炎 (頻度不明)
(急性肝炎も劇症肝炎も急激に肝機能が悪化します。倦怠感、食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが起こりやすくなります。) - 腎不全 (0.1%未満)
(急性腎不全と慢性腎不全があり、急性腎不全では尿が減少したり、全く出なくなることがあります。慢性腎不全では自覚症状は現れにくいです。)
- ショック (頻度不明)、失神 (0.1%未満)、意識消失 (0.1%未満)
- 横紋筋融解症
(筋肉痛、脱力感、尿が赤褐色になるなどが出やすくなります。) - 高カリウム血症
(起こりやすい副作用と頻度の項を参考にしてください。)
- 不整脈
- 汎血球減少 (0.1%未満)、白血球減少 (頻度不明)、血小板減少 (0.1%未満)
(汎血球減少とは赤血球、血小板、白血球が全て減少している状態です。白血球が減少すると免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。血小板減少が起きると、鼻血が出やすくなったり、アザができやすくなったりします。) - 低血糖
(空腹感、発汗、動悸、手指の震え、眠気、脱力感などが出やすくなります。) - 低ナトリウム血症
(倦怠感、食欲不振、嘔気、嘔吐がでやすくなります。)
頻度が不明となっているものでも、頻度が高いものはございません。
体調に何も変化がないのであれば安心して服用継続するようにお願いします。
妊婦や授乳婦の服用について
「服用できない方」の項で記載しましたが、妊婦や妊娠している可能性のある方は服用できません。
理由は羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症などの重篤な有害事象があらわれたとの報告があるためです。
ロサルタンを服用中に妊娠が判明した場合には、「直ちに服用を中止すること」となっていますが、処方薬の中止については主治医の指示が必要ですので、すぐに受診をして適切な指示を受けるようにして下さい。
次に、授乳中の方に対しては、服用を中止するか、服用を継続する場合は授乳を中止となっています。
(ただし、かかりつけの医師の指示に従うようにしてください。)
以上、「ロサルタンカリウム(ニューロタン)のトリセツ」でした。
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